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買春処罰化がはらむ矛盾 「女性やマイノリティーの権利を脅かす」という記事。俺も虚を突かれた。「売春を合法化しろ」というのは実に面白い。これからも菊地夏野さんに注目しよう。以下記事:

秋の臨時国会に向けて、売春防止法の改正案提出の動きが進んでいます。ジェンダー論を研究する菊地夏野さんは、買春の処罰化はマイノリティーの権利をむしろ脅かす恐れがあると指摘します。フェミニズムの視点から、買春処罰化の問題点を論じてもらいました。

  買春側の勧誘の処罰化が議論になっていますが、セックスワークをめぐる日本の議論には、女性やマイノリティーの権利への意識が欠けているように感じます。セックスワークについては、フェミニズムの中でも議論が分かれています。戦前から、売春は女性への暴力であり、差別なのだから廃止すべきだという「廃止主義」が、特にキリスト教系の女性運動では強く見られました。

 売春に従事する女性に貧困階級が多かったのは事実ですが、生活のために自分の意思で売春を行っていた人たちもいて、全員が奴隷状態だったわけではありません。しかし、女性運動として売春廃止を訴えていたのは高い階層の人が中心で、下層の生活のリアリティーがわからない。貧困や差別の象徴として売春の廃止を主張する人たちと、反発する当事者の間でずっと議論が続いてきました。

 セックスワークがすばらしいとは誰も言わないでしょう。ただ、現実にそうした仕事を選んで、働いている人がいるのだから、その権利を保障して、地位を向上させる方向に行くべきです。現在の買春処罰化の議論は、仕事そのものをつぶそうとしています。

 セックスワークには、障害がある人や外国人、LGBTQなどのマイノリティーも従事しています。買春の処罰化はそうした人たちの生活も脅かします。また、買春する個人を罰することは、高市早苗政権が目指している国民の管理強化にもつながりかねません。

 リベラルや左派の政党も、セックスワークとマイノリティーの権利の問題をよくわかっていないのではないでしょうか。日本の左派は男性中心主義的です。フェミニズム的には、セックスワークの権利は家父長制や資本主義への抵抗の意味合いも強いのですが、それが理解されていません。

 セックスワークは、関連して暴力や詐欺が起きやすい。その対策は必要ですが、売買春自体を処罰化すると、被害を警察に相談できなくなってしまう。セックスワークを非犯罪化するほうが、根本的な対策につながると思います。

 日本で、女性やマイノリティーが弱い立場に置かれ、搾取されているのは、社会構造の問題です。その構造を変えることなく、買春する個人だけを処罰しても、女性やマイノリティーの権利や尊厳を守ることにはならないでしょう。

菊地夏野さん

 きくち・なつの 1973年生まれ。名古屋市立大学准教授。専門はジェンダー論。著書に「ポストフェミニズムの夢から醒めて」など。

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