三牧聖子@朝日新聞
朝日新聞に以下:
Re:Ron対話 宇野重規×三牧聖子
【宇野】 投資家のピーター・ティール氏についてはどう思いますか。彼のような人がバンス氏を引っ張り上げたわけですよね。競争ではなく、ゼロから何かを創造するんだ、という考え方を持ち、近年はトランプ氏を支持し、スピリチュアルな色を強くして、アンチキリストみたいなことを言い出しています。
【三牧】 巨額献金を通じ、一国の政治を左右できるほどの富を持つ彼らが、「あらゆる規制を撤廃し、最大限の自由のもとに行われる技術革新によって人類は救済される」という考えのもと、技術の暴走を懸念する人々を「アンチキリスト」と非難している現状には恐怖と欺瞞(ぎまん)を感じます。
彼らが「未来に人類を救う」と開発を進める技術によって、いまこの瞬間に、人々が管理され、殺されている現実があるからです。少なくとも7万人超の住民が犠牲となったパレスチナ自治区ガザでのイスラエルの軍事行動には、ティール氏が共同CEOを務めるパランティア・テクノロジーズ社提供のAI技術が用いられてきました。アメリカ国内でも、市民の殺害にまで至ったICE(移民・税関捜査局)による無差別的な移民の取り締まりに、パランティア・テクノロジーズ社製の監視ツールが用いられてきました。彼らは、技術開発の自由を声高に主張しながら、弱き人々の自由や生命が奪われることは気にしない。それどころか、技術革新の「やむなき犠牲者」とみなしているかのようです。いつの日か、彼らが技術開発の果てに「ノアの方舟(はこぶね)」を生み出しても、乗ることを許されるのは極めて限られた人々ではないでしょうか。
トランプ政権がデンマーク領グリーンランドの領有に執着する背景にも、「規制なきユートピア」というテック・リバタリアンの欲望が絡んでいるという報道もあります。政治権力とも結びつき、自らの権力と自由を肥大化させ続けるごくわずかな富裕層と、自らの運命すらいよいよ制御できなくなっている大多数の市民。これこそが今の世界で最も本質的な対立軸ではないでしょうか。
【宇野】 彼らはある種のテクノロジーのユートピアみたいなものを信じていて、それが善であると思っている。
そもそも、西海岸のテクノロジー系の人と、中西部のMAGA派の人たちは、本来は全く異質な集団だと思う。ところが、今のところトランプ氏という特異なキャラクターがその両方をなんとなくうまく結びつけ、むしろ力にしている。こうした状況がどこまで続くのかまだ見えませんが、今までのアメリカの理念を破壊してしまうパワーがあるのではという危惧は共有しています。
■では日本は アメリカとどう対話するのか
では、そういうアメリカと日本はどう付き合っていったらいいのか。アメリカは矛盾だらけですが、MAGA派があり、テック派がいて、宗教の問題があって、色々な矛盾がごった煮になっている。
一方で日本の場合、エリートに対する破壊者という意味では共感があるかもしれないけれど、アメリカの複雑な文脈を全ては共にしていない。にもかかわらず、表面的にトランプ氏に共感を覚える人も結構いるのではないでしょうか。
また日本人は、やはりアメリカはデモクラシーの国であり、色々な矛盾はあるけれどもその理念に向かって少しずつ進んでいると戦後繰り返し聞かされ、どこかでそれを信じてきました。だから日本もそういう民主主義の国になるんだ、とも。ここでいきなりアメリカは実は民主主義の国ではなかった、と言われると、「え、どうするの!?」となる。
日本は思い切って「もうアメリカとは付き合わない、トランプ氏とは距離を置く」と考えるのか、もしくは、なおもやはりアメリカの可能性を期待して「アメリカにきちんと進んでもらうためにも本来の進むべき道はこっちだと働きかけるべく、日本はもっとアメリカに関わるべきだ」と考えるのか。三牧さんはアメリカ研究者で、今後日本はアメリカとどう付き合い、どう対話していったらいいと考えていますか。
【三牧】 難しい問いです。
人類は、2度の世界大戦という凄惨(せいさん)な経験への反省から、戦争や植民地が完全に合法とされた世界を否定し、戦争を違法化し、植民地支配をなくそうとしてきました。そしてアメリカは、20世紀にこうした動きを先導した国の一つだったはずです。こうした歴史に鑑みて、たとえ今のアメリカが「大国が利益のために法や規範をふみにじって何が悪い」という態度を見せていたとしても、その態度を改め、再び秩序や正義の側に戻ってくる可能性を信じたいと思っています。
他方、日本においては「アメリカは横暴な態度をとることもあるが、結局は正常に戻る」という、実はきちんと検証されていないアメリカ観が、アメリカに安全保障や経済など深く依存した現状に安住し、アメリカからの自立を真剣に考えることを妨げてきた面もあるのではないかと反省するところもあります。
そのことを痛感させたのが、1月にスイスで開催されたダボス会議でカナダのカーニー首相が行った演説でした。
カーニー氏は「弱き者の力は誠実であることから始まる」と強調し、もはや「ルールに基づく国際秩序」も、その擁護者としてのアメリカも存在しない、存在しない古い秩序へのノスタルジーに浸り、行動を変えない理由にしてはならないと訴えました。そして「交渉のテーブルに着かなければ、自らがメニューとして載せられてしまうだけ」という切迫感を持って、新しい秩序を模索していくべきだ、とりわけ、大国のルール違反による国際秩序の崩壊に歯止めをかけるべく、中小国は結束しなければならないと主張しました。
今年に入ってカーニー氏は長年関係が冷え込んでいた中国をカナダの首相としては8年ぶりに訪れ、関係改善をはかっています。3月にはインドを訪問し、貿易などもろもろ協議する予定です。そこにあるのは、今やアメリカは、軍事的・経済的な依存関係を武器として使って、同盟国から巨額投資など法外な利益を巻き上げようとする国になったという、変貌(へんぼう)するアメリカへのリアルな認識です。アメリカによる軍事的・経済的威圧に対抗し、自立を確保するために必死で行動しているのです。
日本はこうした切迫感を共有し、行動しているでしょうか。
カーニー氏は「ノスタルジーは戦略ではない」と言い切り、「まだあの頃に戻れるかも」といった楽観をすてよ、と訴えましたが、ひょっとしたら日本はアメリカの同盟国の中で最も、過ぎ去った時代へのノスタルジーから抜け出せず、アメリカはいつか正気を取り戻して、よき兄貴分として戻ってきてくれる、といまだに信じ続けている国だといえるかもしれません。
しかしトランプ政権の一連の行動は、一時的な「気の迷い」ではなく、「正気」から生まれているのかもしれません。バンス副大統領はトランプ氏以上の孤立主義者で、同盟国の安全にいっそう関心を持たないともみられています。もしかしたら第2次世界大戦後、過去80年の、国際社会に関心を持って、世界平和や同盟国のために汗をかくアメリカこそが「例外」で、もはやそうしたアメリカは二度と戻ってこない可能性にも備えなければ、と思うのですが。
【宇野】 そうですね。さらに日本のノスタルジーの悪いところは、心の中にどこかしら、アメリカが宗主国だというところが染み込んでいる。自分たちで考えなくてもアメリカが判断してくれる、強い宗主国であるアメリカに従っていけばいい、それが生き延びる道なんだ、という発想です。ある種の思考停止ですよね。今の日本にとって危険な発想だというのは本当にその通りだと思います。
ただ一方で、それではアメリカと縁を切って中国のほうに行けばいいのかというと、そういうわけではないでしょう。
日本はしっかりとアメリカに働きかけて、日本の立場や主張をきちんと伝えていかないといけない。こういう時代だからこそ、精神的にアメリカから自立すると同時に、その上で、対等な存在としてアメリカときちんと対話していく。それは理想論に聞こえるかと思うけど、でも中小国としての生き残る知恵ですよね。
【三牧】 アメリカへの依存ゆえ、日本は、アメリカの問題行動を批判することができず、それどころかアメリカに少しでも批判的とみられかねない行動を全力で回避する傾向すらあるように思います。年初にアメリカがベネズエラで軍事作戦を行ったとき、高市早苗首相は「国際法は尊重されなければならない」という原則を確認することもしませんでした。アメリカを批判できないのは他の同盟国も同じでしたが、その後、ハンガリー以外のEU加盟国は共同で、アメリカを名指しすることはしなかったものの、「国際法を尊重しましょう」という声明を出した。アメリカを怒らせたくない、ただ、原理原則を確認することすらせずに黙認したら、中国、ロシアに加え、アメリカも国際法を無視して好き放題に振る舞う、そんな世界を助長してしまう、そうした切迫感があったのだと思います。
対して日本には、一緒に原理原則を確認したり、アメリカを説得したりするために一緒に行動できる仲間があまりいない。
アメリカの顔色をうかがうばかりに、外交的な選択肢が狭まる、原理原則にのっとった行動ができないという問題は、パレスチナ国家承認の問題にもみられます。既に150カ国超が承認している中で、承認していない日本はいよいよ少数派です。最低限の正義ですら貫けなくなっているのではないでしょうか。
アメリカは日本にとって大事な国であり続けるでしょう。しかし、どこかの時点で、アメリカへの過剰な忖度(そんたく)をやめて、必然的に多極化していく世界での新しい外交を準備し始めなければならない。
【宇野】 準備すべきですね。日本はいま、準備しないままにこの世界の大きな変動を迎えようとしている。それが一番危ういと思います。
アメリカに依存せざるを得ない国がどうしたら自分の主体性をそれなりに維持できるか。決して国際法がすごく機能するわけではないけど、アメリカに対して主張できる国際法の存在は大きい。中小国を守ってくれるものとしての国際法を守り、国際システムをどこかで立て直していかなければいけない。その上で、宗主国に対するある種の依存、あるいは過剰忖度を超えて、本当の意味でアメリカと正面から対話をできるようになっていかなければならない。その準備を今から始めなければ、日本は取るべき道を見失うばかりです。
アメリカの矛盾も、日本の危うさも、すべて直視した上で、なお対話を諦めない。その覚悟を持つことからしか、この時代を乗り越える道は開けないと思います。
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ピーター・ティールのパランティア・テクノロジーズ、イーロン・マスクのXやスペースX。25年前のディック・チェイニーのハリバートン同様、アメリカ大統領は大金持ちを政府に登用し、その大金持ちのやってる会社を使って政策を実行し、その会社に稼がせる。もっと厳密に言えば、大統領にはそんな才覚は無く、大金持ちが自分の意のままに動く大統領候補を大統領にして自分は政府に入り、自分の会社が中心となって推進するような政策を大統領にやらせるのだ。(故意か偶然か、25年前も今もアラブ人いじめという共通点を持つ政策だ)25年の歳月を感じるのは、ハリバートンは石油関連の会社なのに対し、パランティアやXはハイテク会社であることだ。ティール、マスクともアメリカ生まれでないのが興味を引く。二人でPayPalという決済会社を作ったのも面白い。
キリストは技術は暴走しない、と言ったのかもしれないが、キリスト誕生の前に、我が荘子は「機械あれば機心あり」と喝破した。技術は暴走するに決まっている。暴走する前に人間を支配するようになる。でも技術がない時代には戻れない。技術というものが登場して以来、人間は技術に使われる身となって苦しみ出した。
アメリカは二度の世界大戦後のように世界をリードするか?答えは否だ。万が一世界をリードする方向に戻るとすれば、アメリカ国民が再び「自分たちより子供たちの方が豊かになれる」と信じることができた時だ。言い方を変えればアメリカが食い物にできる国を確保したときだ。どこかの国を食い物にしてコストを回収しない限り、民主主義なんてきれいごとは成り立たない。
三牧さんは日米関係について勘違いしているか、分かっていて婉曲な言い方をする。日本はアメリカの「妾」あるいは「ポチ」なのだ。だから逆らえない。もちろん、文句も言えない。精々できるのは「すねる」ことくらいだが、早苗はすねるのもうまそうだ。アメリカと対等ではないし、周囲の国も「アメリカの女に手を出したら危ない」、と近づかない。最低限の正義・・・妾にそんなものあるか?!
妾をやめるにはどうしたらいいだろか?思い切ってアメリカに「今までお世話になりましたが・・・」と切り出すしかないか?アメリカを捨てると言うより捨てられるのだ。それなりの覚悟と準備がいる。アメリカが怒って出ていってしまった後の国防をどうするか?日本が丸裸になるしかないように思われる。やられたらやられっぱなしを覚悟するのだ。そう宣言すればまずアメリカが再度「やり」に来るだろうか?日本ってそんなに魅力ある国だろうか?
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