放送大学・高橋和夫先生「核」を語る

 放送大学「世界の中の日本外交」という番組を見る。第11回では俺の敬愛する高橋和夫さんが講師を務め、核について語る。

番組中、ICAN(核兵器廃絶活動を行っている団体)の川崎哲にインタビューする。高橋先生、皮肉っぽく「ICANの活動は前進しているという感覚を持っているんですか?」と質問する。川崎氏はこの種の運動家に典型的に見られる反応で「最大の成果は核兵器禁止条約だ、『やればできる』と思う」と。高橋さん、突っ込んで「日本政府は条約を批准していないのですが・・・」と畳みかける。川崎氏は「核兵器禁止条約ができて核兵器を持ってる国はあわてている。残念なのは被爆国の日本がまだ入っていない事で、核の傘なんていう日本政府の考え方は古い」と評論。更に「軍備増強している近隣諸国から日本を守るにはどうすべきか?」と聞くと川崎氏の答えは「核兵器はダメだが非核兵器ならいい」・・・。これ以上高橋先生は突っ込まない。ICANなど、話しするだけ無駄だ、と聴講生に理解させたいとお考えになったのではないか?

その後、被爆者のおばあさん(近藤紘子)にインタビューを流す。彼女は母親のおなかにいるときに被爆した。被爆者の後遺症を見て、彼女は原爆を落としたエノラゲイ(の搭乗員)を憎み、仕返しをしようと決意した。後年アメリカでエノラゲイの副操縦士だった男を見て「あなたたちが原爆を落としさえしなければよかったのに」と思ったが、彼が「広島が消えてしまった。何という事をしたんだろう」と涙ながらに語っているのを見て「彼も同じ人間だ、と思い、『自分だけが正しく、原爆を落としたアメリカ人は悪い』と思い込んでいたことは間違っていた。憎むべきは戦争」と。

高橋さんもアメリカの子供から「日本はアメリカから核兵器というひどいものを使われたのに、何故アメリカと仲良くしてるの?」という質問をされ、その時も答えられなかったし、今もその答えを探していると。そんなアメリカに守ってもらうって・・・とも。

また、「核兵器のもたらす非人間的な被害を被爆者が語ることは原爆保有国の指導者にその使用を躊躇させる効果がある」とも。

高橋先生はICANのWokeismより、被爆者の正直な気持ちの方に好感を持っていることは確かだろう。

番組最後に”What a wonderful world”のピアノ演奏を流すのもいい。高橋さんに「この曲でLouis Armstrongは美しい世界を歌うが、アメリカ政府がアメリカがあたかも世界平和を願っているようにPRするために利用され、Louis Armstrongはこの歌とともに世界中をアメリカの大使として訪問した」と教えてもらった。このことを教えてもらう前、俺はこの歌をいい歌だとしか思っていなかった。

閑話休題:

通常兵器ならいい、という発想はどこから出て来るのか?また核兵器がなくなったって、それ以上むごくて効率よく人を消すことができる兵器が出て来るだけだろう。要は近藤紘子さんの言う通り、戦争をしない事だろう。しかし、そう考えを進めていくと「たまには戦争くらいした方がいい。それが人間の業だ。」と思う。

人間は自分ではコントロールできず、地球を滅ぼすことも可能なものを生み出した。そろそろおしまいかな?と思う。

何故ひどい目に遭わせたアメリカと仲良くするか?と言う問いに対する俺なりの答え:

①敗戦の時、日本人は「もう戦争/天皇陛下万歳はこりごり」だった。

②戦争をしないための手っ取り早い選択肢はアメリカに守ってもらう(代わりに隷属する)事だった。そして伝統に従い、天皇は雲の上にあげてマッカーサーを天皇の代わりの神様にした。


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