enshittification
AERA 2024年10月21日号に以下:
英国在住の作家・コラムニスト、ブレイディみかこさんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、生活者の視点から切り込みます。
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発足したばかりの石破内閣の支持率が早くも低迷しているそうだ。7月に選挙で大勝した英国のスターマー政権の支持率も大幅に下がっている。もはやハネムーン・ピリオドなどというものは存在しない。新首相の支持率が落ちるスピードは、どんどん速まっている。ニュー・ステイツマン誌によれば、現在、西側諸国には人気のある首相や大統領はほとんど存在せず、アイルランドやオランダといった少数の例外を除けば、純支持率はみなマイナスの数字である。
英国で「チェンジ」を連呼して政権についた首相が、有権者を失望させ嫌われる様子を見ていると、思い出す言葉がある。SF作家のコリイ・ドクトロウが提唱した「enshittification(エンシティフィケーション)」だ。en~(~にする)+shit(クソ)を核とするこの言葉は「メタクソ化」とも訳され、テック業界関連の英語記事でよく目にする。オンラインのプラットフォームは、最初はユーザーにとっての価値を考えて作られるが、ユーザーの囲い込みに成功するとスポンサーなど企業顧客にとっての価値を優先するようになり、最終的には株主の利益を上げるために運営されるようになって、サービスが改悪されてどんどん使いにくいものになっていくという意味だ。FacebookやTwitterやアマゾンなど、巨大化したプラットフォームはすべてこの過程を辿ることから逃れられなかったという。
政治の劣化もそれに似てやしないだろうか。ユーザー(人々)にとっての価値や使いやすさが最優先のはずなのに、関連企業やメディアや政治家たちにとっての価値を優先させ、その利害を調整することが政治と呼ばれるようになった。結果、人々にとってはメタクソ化が進み、誰が政権を取ろうと同じような状況になるのではないか。
メタクソ化の解決策の一つは、エンドツーエンド(通信を行う利用者間)原理を強化して、アルゴリズムや広告が間にごちゃごちゃ入ってこないようにすることだという。政治に置き換えれば、「人々のために政治を行う」になるだろうか。理想論かもしれないが、メタクソ化が進めばやがて死に至るそうだ。なんとも恐ろしい現代の病である。
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enshittificationは今に始まったことではない。ヘーゲル・マルクスの昔から、言われる「弁証法」だ。ヘーゲル・マルクスによれば、enshittificationは、放っておけば止揚され、革命が起きてひっくり返るはずだが、「巨大化したプラットフォーム」にせよ、「メタクソ化して支持率を落とす政治家」にせよ、次から次へと新しいものが出てきて、中々死にそうにない。共産主義って、Wokeismの極致で、「一部の目覚めた賢いエリート(絶対間違えない神様)による独裁」だ。絶対間違えない神様は見つからなかった。それに対するトラウマ、アレルギーは強い。自由とか、資本主義ってしぶとい。
エンドツーエンド(通信を行う利用者間)原理って、昔の電話や手紙のように一人一人別々にコミュニケーションするってことか?電話や手紙よりテクノロジーが発達しても人間の能力を超えていて人間を幸福にしないということか?核に似ている。人間の「進歩」は人間のコントロールできない核やAIを生み出して人間がコントロールされるようになる。そんな馬鹿な状況が永遠に続くとは思えないが、どうしたらいいのかは分からない。山本夏彦さんは「生まれ出てしまったものはもとには戻らない」てなことを言った。核もAIもなかったことにはできないのか。
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