天皇陛下の経済学

 1982年11月「諸君」掲載 山本七平ーベンーアミ・シロニー対談

シロニー:日本はダイナミック過ぎた時代にも、たとえば戦国時代にも分裂しなかった。これは面白いです。枠組みがいつもあったんです。

山本:考えてみると、たしかにみんな自分の官僚を持ち、裁判権を持ち、行政権を持ち、交戦権も持っている。彼らから見ると、あれは独立国なんです。ところが、誰も自分たちは独立国だという意識を持っていない。いずれ日本と言うのは国家統一されるべきものだという意識を持っていたんです。

シロニー:父親がいるから、何でも出来るわけです。たとえばサーカスを例にとると、サーカスの曲芸師は、防衛ネットがあるから高いところでジャンプすることができます。天皇制とか、天皇の存在は日本人に取って、そういう防衛ネットの役割を果たしたと思いますね。日本人の特徴は、変わるという事だと思います。それが平気です。日本は毎年毎年どんどん変わってもあまり恐れない。他の国民はそれを恐れます。しかし日本人は平気です。例えば五重塔と比べると、もしそこの真ん中に柱があれば、地震があっても崩壊しない。どんなに揺れても平気です。天皇の存在は、日本人のためにそういう五重塔の柱のようなものだったと思います。

山本:そうですね。どこかで日本人は、どう変わったって自分が崩壊するはずがないと思っているんですね。何故そう思っているかを分析しようとはしませんけど。

>>日本人は「保守的で変わらない」と言われ、また、「日本人は安心してどんな変化も受け入れる」とも言われる。保守的とは、自分の頭で考えて進歩あるいは発展という仕方で変わることはしない、ということ。しかし、外圧あるいはお上から「明日からこう変わるぞ」と言われれば大胆に新しいやり方に取り組む、ということ。天皇に象徴される、日本人あるいは日本国というものが五重塔の心柱のように日本人の中心にあるから、国のことなど自分の頭で考えようとしない。でも「永久に不滅」と信じている。


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