小熊英二さん寄稿 有権者の想像力と意志が決める「よき統治」

朝日新聞デジタルに以下:

 日本は65歳以上の労働参加率もOECD諸国のなかでは高い方だが、その4分の3は非正規雇用だ。つまり非正規雇用の地位が低いことが、女性の地位や高齢者の境遇、さらには人間の尊厳に関わる問題を引き起こしている。

>>小熊氏によれば、女性にしろ、高齢者にしろ、非正規(=低賃金)雇用が多いからダメなんだそう。そして低賃金=尊厳がなくるのだそう。<<

 なぜそういう問題が生じたか。正規雇用が減ったからではない。実は統計上の正規雇用の数は1980年代とあまり違わない。大きく減ったのは自営業で働く人(自営業主と家族従業者)で、それと入れ替わるように非正規雇用が増えている

 これは日本における「一人前と認められること」のあり方に関わる。なぜなら高度成長期以前の日本における「一人前」は、正社員になること以上に、自営開業することを意味していたからだ。

「善くある」の実感が困難な社会

 20世紀半ばまでの日本では、公務員か大企業事務職でなければ、安定雇用や年功賃金は望みにくかった。他の多くの人は農家で働くか、親方の下で働きながら職人や商人として修業し、自分の店や工場を開業することを望んだ。

 日本で雇用労働者の総数が自営業で働く人を超えたのは1959年である。それ以前は農業や商工業の自営業で働く人が過半を占めていた。また雇用労働者にも、自営開業までの修業期間か、兼業農家の家計補助だと考えている人が多く、賃金が低くても大きな問題としない傾向があった。日本の非正規労働者や中小企業労働者の低賃金はその時代の遺産である。

 だが自営開業は80年代以降には衰退した。昔の製造業は中古旋盤一つでの開業も多かったが、21世紀にはIC制御の製造機械が必要になり、開業費用は億単位となった。90年代初頭までの地方圏には兼業農家が経営する零細工場が多く存在したが、アジア圏とのコスト競争に敗れ消えていった。そうして地域全体で回るお金が減ると商業自営業も減少し、地域の社会関係も薄れていく。80年代初頭までは農林自営業主の減少を非農林自営業主の増加が相殺していたが、以後は減少の一途だ。

 代わって増えたのは非正規雇用だ。正規雇用は減っていないが、これは昔も今も全就業者(自営業部門含む)の半数強にすぎない。残り約45%は自営業と非正規で、そのなかで自営業が減少し非正規が増えた。また正規でも中小企業なら必ずしも賃金は高くない。

 そしていまの非正規労働者や中小企業労働者は、自営開業するために腕を磨く仕事をしているとは言いがたい人も多い。開業しても自営業そのものが危機的である。その状態で低賃金なら、人間として「善くある」という実感を持つのは困難だ。それが就業者の半数近い社会は「よき統治」が実現しているとはいえない。

 こうした状態は、生まれる子供の半数近くが、将来は尊厳を維持できそうもない社会であることを意味する。少子化も当然だろう。

「生きていけない賃金」が侵す尊厳と人 

この状態はどう解決できるか。まず安易な回答はないと覚悟すべきだ。また「昔に戻る」ことは無理と知るべきだ。日本の自営業が衰退したのは技術革新やグローバル化によるもので、時計を逆戻りさせることはできない。自営業が増えている先進国もあるが、それは知的専門職自営業(医師・弁護士・IT技術者など)か、名目的には自営業でも実際は請負の低賃金労働者であることが多い。

また日本型の正規雇用は半ば必然的に雇用調整の可能な非正規労働者を必要とする。そのため正規雇用の増加は重要な措置ではあっても、全体をカバーするのは難しい。もちろん、人種や民族の誇りという形で尊厳を回復しようとするのは、一時の気休めにしかならず論外の選択である。

 そうなると当面は非正規雇用の待遇改善が重要な選択肢である。その方法については専門家の意見も分かれており、私には回答は出せない。ここでは議論の喚起のため、私見を述べるにとどめたい。

>>小熊氏の主張は

①自営業は復活できない、

②中小企業は給料が安い

③給料が高い大企業の正規雇用は雇用の調節弁として非正規雇用を必要とする

④大企業の非正規雇用の給料を上げれば生きていける賃金が実現でき、少子化対策にもなる。

①と②は大前提だが、何故そうだったのか?今後もそうであり続けるのか?の説明がないから釈然としない。

俺は大企業であろうが零細・自営であろうが、元気で売れる商品を生み出す組織・会社が必要でそれをどう育てるのか?が問題だ、と考える。大企業だって衰退したのは技術革新やグローバル化によるもので、時計を逆戻りさせることはできない。こと、自営業、零細企業と全く同じだ。

表題の「よき統治」も、元気で売れる商品組織・会社を生み出す政策のことだ。

もっと言えば、大企業の正規社員なんか目指さないで一人で(あるいは志を共にする同志とともに)起業する者を育てる教育と、起業したてで海のものとも山のものともつかぬ組織・会社を見つけ、育む投資の仕組みが必要だ。

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