和田秀樹 上流を「売国奴」にする教育、下流を「奴隷」にする教育

 2006年 イースト・プレス刊「アメリカの日本改造計画」より:

今はカネを稼げた人の方が偉いという倫理観が広がっています。だから優秀な日本人はみんなアメリカに引き抜かれてしまう。本当のエリートはカネでは動かない、という事を叩き込むのが本来の愛国教育なんです。日本の右翼や保守論者たちは、みんな増税に反対するでしょう。あれは不思議で仕方がない。私有財産と国を天秤にかければ、国の方が大事だと考えるのが、本来のエリートや金持ちのあるべき姿です。所得税率を高くした瞬間に外国に逃げるヤツが増えるのであれば、「上等じゃないか、そんなヤツは二度と日本に入れてやらないそ」と言ってやったほうがいい。「ハリー・ポッター」を翻訳した松岡佑子氏のように、国の税金を払うのが嫌だからといってスイスに移住するような者もいます。そんな人間には二度とビザを発給せず、日本には入れてやらないというくらいの気概が必要です。カネを持ってるヤツが偉いという社会は危ない。日本の優秀な技術者が平気で海外に引き抜かれてしまうからです。簡単にカネで引き抜かれてしまうようなヤツらは「売国奴だ」と後ろ指を差されなければならない。逆に言えば、日本に残って日本のために頑張る連中を褒めたたえる世の中でなければならない。日本の学歴社会は、カネで人の価値に差をつけはしませんでした。カネがなくても官僚は銀座のクラブでモテたり、貧乏な学者でも京都の芸者さんにモテるという風潮はあったわけですよ。そのことを庶民が僻んではいけないと思う。彼らは私腹を肥やさずに国のために働いているのだから、銀座のクラブで官僚がモテようが、京都の祇園で学者がモテようが、当たり前なのです。ところがいまは官僚や学者であってもモテず、カネのあるヤツのほうがモテるようになってしまった。そんな社会では、官僚が私腹を肥やすか外資に引き抜かれるかして銀座でモテようとするわけです。祇園でもカネがないとモテないとなれば、学者がベンチャーのようなことを始めてカネを作り、モテようとする。その方が、健全な資本主義だ、とアメリカは言うわけです。(略)

差別反対の世論が広まる中で、日本の教育では「賤しい」ということについて教えなくなりました。八木秀次さんは「昔は賤業という職業があった」と言ってましたよ。「賤業」というのは嫌な言葉ですが、しかし昔の人は賤業から脱却したいと思って勉強したところがあります。僕が灘高校に行ってたころ、灘には在日韓国人がすごく多かった。パチンコ屋さんをやっている在日の家は大金持ちなのに、親には息子を医者や官僚や弁護士にしたがってる人が多いんです。いくらカネがあっても、パチンコ屋は賤業だと彼らは思っていたのでしょう。今は逆です。神田うのの婚約者のように、新宿のパチンコ屋さんの息子が「青年実業家」と名乗り、小学校からの一貫校を卒業してセレブと称している。神田うのは旧通産省のキャリア官僚の娘なのに、パチンコ屋さんでカネがある恋人を選ぶわけです。「いくらカネがあっても、この職業では…」というコンプレックスのようなものがかつてはあったことは」事実です。

カネは世襲できるでしょう。つまり、なんの努力もしないバカ息子でも金持ちでいられます。かつて相続税の最高税率は7割でしたが、いつのまにか5割に引き下げられてしまいました。しかも日本人で相続税を払っている者はわずか5%しかいない。日本人の相続財産は全体の4%しかありません。日本は一番カネを相続しやすい国なんです。ペーパーカンパニーをつくれば相続税を誤魔化せますから、相続財産が数千億円もあったとされるのに100億円程度しか相続税を払わないソニーの盛田昌夫氏のような人間も出て来る。

親が80歳まで生きる時代ですから、会社の後を継ぐ子供が毎年会社からもらう給料だけでも相当な額になります。それでけで十分相続のようなものでしょう。社長を40歳で継いで、親が死ぬまで20年も社長をやっていれば、親が死ぬまでに10億円くらいのカネはもらえるわけじゃないですか。金持ちの子供は必ず金持ちになれてしまう。

いまや一見、賤業も差別もなくなったかのように見えますが、相続と言うシステムがある以上は構造的な差別は消えません。ミクシーの社長のように、宝くじが当たったかのような何万人に一人のアメリカンドリームが出て来る場合もあります。そのことを人は「階層の逆転のチャンスはある」と言うでしょう。一方、学歴社会だと批判されていた時代には、階層の逆転はものすごく当たり前にありました。

>>「賤しい」と言う言葉に最も近いのがトランプ・イーロンマスクのコンビだ。大統領と言う職業が賤業になってしまった。カネ儲けしたくって大統領候補に巨額の献金をする、その献金のお礼に政府の主要ポジションを約束する…これが資本主義・民主主義の成れの果てだ。そろそろ破綻というか、ひっくり返ってもいい。それともトランプ・マスク組が選挙で負けるのか?

江戸時代のように階層の逆転ができない社会。日本の歴史は必ず階層の逆転が起こる社会を生み出してきた。江戸時代の階層固定をぶっ壊したのが学歴だった。江戸時代の前も戦国時代で、下剋上だった。

「いい学校に行っていい会社(就職先)」が学歴社会の理想だった。

今は「いい学校に行っていいキャリア」だ。学歴社会に違いはない。”一生同じ会社”が”キャリアを積んで見栄えよく”か。額に汗して・苦労してカネ稼ぐより楽して・好きなことして…ということか。理想はFIREで若くしてリタイアかYouTuberか?

階層が固定化すると、金持ちの子供は何もしないで財産を食いつぶす。貧乏人だけがキャリアを積んでカネを稼ぐ…

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