「残りの人生を賭けて闘う」KADOKAWA・角川歴彦元会長が「人質司法」で6月27日に国を提訴へ

7月4日付けの文春に以下:

大手出版社KADOKAWAの元会長・角川歴彦氏(80)が、明日6月27日、国に対して2億2000万円の損害賠償を求める訴訟を提起することがわかった。また、同日13時から東京都内で記者会見を開く。

 今回の提訴に先立って、角川氏は「週刊文春」とジャーナリスト・浜田敬子氏の独占インタビューに応じ、国家賠償請求訴訟を提起した理由などを明かした。

「人質司法のあり方」を訴えたい

 角川氏は2022年9月14日、東京五輪のスポンサー選定をめぐる汚職事件で東京地検特捜部に逮捕された。元部下と共謀の上、五輪組織委員会元理事の高橋治之被告に賄賂を渡してスポンサー選定を依頼したという容疑だった。

角川氏は聴取に対し、一貫して容疑を否認。そのため、226日にわたって勾留され、2023年4月27日にようやく保釈が認められた。

 角川氏が語る。

「僕がこの裁判で訴えたいのは、『人質司法のあり方』です。国家賠償請求の形を取っていますが、賠償金が欲しいわけでもありません。

 司法のあり方、検察の捜査手法そのものを問う裁判を起こすことは五輪汚職の裁判にマイナスな影響を与えるかもしれない。それでも僕は日本の人質司法の非人道性、違法性を知ってほしい。憲法や国際人権法に照らせばどれほど人権を侵害しているのか」

「残りの人生を賭けて公共訴訟という形で問いたい」

 弁護団に名を連ねるのは、「無罪請負人」とも呼ばれる弘中惇一郎弁護士のほか、団長は村山浩昭弁護士が務める。村山氏は2014年、袴田事件で「袴田巌さんは無罪の可能性が高い」と再審開始が決定された際の裁判長だった人物だ。

 村山氏はこう指摘する。

「人質司法そのものが憲法違反で、国際人権規約からみて人権を蔑ろにしていることを問うのはこの裁判が初めてだと思います」

そして、角川氏はこう語気を強めるのだった。

「僕は残りの人生を賭けて公共訴訟という形で問いたいのです」

>>>カルロス・ゴーンが逃げ出し、江川紹子さんも数年前から取り上げている「人質司法」。

以下、3月22日付け YAHOO!ニュース エキスパート に記載された江川さんの意見;

「無罪推定」はどこへ?~人質司法と貧困な拘置所医療を追認する東京地裁の人権感覚・冤罪大川原化工機事件

冤罪・大川原化工機事件で、勾留中に体調を崩し胃がんが見つかった後も保釈が認められず、その後外部の病院で死亡した相嶋静夫さんの遺族が、東京拘置所で適切な検査や説明がされなかったとして起こした国賠訴訟で、東京地裁(男澤聡子裁判長、塩田良介裁判官、海野泰信裁判官)は3月21日の判決で、原告の請求すべてを棄却した。貧困な拘置所医療を追認する判決に、相嶋さんの長男は「父が受けた苦しみを理解してもらえなかった」と落胆した。

検査していないのに、病の情況がどうして分かる?

 相嶋さんが2020年7月に警察の留置場から東京拘置所に移された時点での健康診断は、血中ヘモグロビン値が低く、貧血状態であることを示していた。8月には相嶋さんが胃の痛みを訴え、9月になると貧血がひどくなった。黒色便などの症状も見られた。拘置所病院は8月に胃薬を処方し、9月には輸血を行ったものの、それぞれの時点で必要な検査を行わず、漫然とがんが進行するのにまかせた、と原告は主張。さらに、がんであることが分かった時点で、適切な治療ができる医療機関に転院させるべきだったと訴えた。

 これに対し判決は、いずれの段階でも拘置所側の対応に問題を認めず、転院についても「本件患者(相嶋さん)について、すぐに手術をしなければ救命できないような症状があったという事情は認められ(ない)」などとして退けた。

 相嶋さんの長男は、この判断に疑問を呈する。

「(拘置所病院は)そもそも検査もしていません。それでなぜ、すぐに手術が必要な状態ではなかったと言えるんでしょうか」

拘置所医療は患者本人に説明しなくてもOK?

 拘置所病院も、外部病院での検査・治療を調整はしていた。しかし、それについて患者本人である相嶋さんや弁護人には具体的な説明はなかった。「無罪推定」が働く被告人の立場なのに、患者本人が医療を選べないだけでなく、どこの医療機関がどういうスケジュールでどのような検査や治療をしてくれるのかも知らされなかったのである。

 しかし、これについても判決は、拘置所側の対応には「不適切であったという事情も認められない」と問題視しなかった。

検査が遅れたのは弁護人のせい?

 このままでは適切な治療が受けられないまま拘置所内で殺されてしまう――そんな焦燥感にかられる相嶋さんを、なんとか外部の医療機関に入院させようと、弁護人が保釈を請求。しかし、裁判所は認めなかった。その後、ようやく8時間だけ勾留執行停止が認められた10月16日、相嶋さんは都内のJ大学病院の診療を受けた。しかし、J病院は限られた時間で詳しい検査はできないとし、進行がんの診断書を書くだけで、それ以上の対応は拒んだ。

 その後も保釈は認められず、結局、詳しい検査を受けられたのは、再度の勾留執行停止で11月6日に神奈川県内の病院に入院してからだった。

 ところが判決は、詳しい検査が遅れたのは、弁護人のJ病院との調整不足のせいであるとし、「原因を東京拘置所の医師の説明不足に求めることは適切ではない」と、原告側の主張を切り捨てた。

 高田剛弁護士はこれについて「拘置所医療が、今後の予定等についての情報を開示すべきなのに、それを棚に上げて、(弁護側の)段取りがまずかった、という評価はとても心外だ。この問題は保釈がされていれば、何の問題もなかったのに、極めて短時間の勾留執行停止の中で行わなければならなくなった。そもそもは、がんの患者の保釈を認めない裁判所の問題だ」と批判した。

人質司法+貧困な拘置所医療=?

 無実を主張すれば、勾留期間が長くなる人質司法。それに加えて、このような拘置所医療を是とする今回の判決を前提にするならば、人はひとたび逮捕されれば、否認する限り、一般の人が受けられる医療にアクセスできないまま拘置所内で命を縮めても甘受しなければならない、ということになる。これが、東京地裁の人権感覚だとすれば、いったい「無罪推定の原則」はどこへ行ったのだろうか。

 相嶋さんの長男によれば、逮捕されるまで相嶋さんは2か月に1度はかかりつけ医に検査をしてもらうなど、健康に気を使っていた。7月の健康診断で分かったような貧血が分かれば、当然精密検査を受けていたはずだと言う。ところが、無実を訴えていると勾留が長引く人質司法のために、その機会は奪われた。

「勾留が長くなると、受診の機会もなくなる。人質司法の弊害は、医療の継続についても問題だ。捜査機関や裁判所は、そこを踏まえて勾留の判断をしてほしい」(相嶋さん長男)

 高田弁護士も、勾留に関する判断をする裁判官に、こう警告する。

「令状裁判官は、この現実を踏まえて判断してほしい。保釈しない、ということは一般の人が受けられる医療が受けられない状態が続く、ということ。がんの場合、自覚症状が出る前に発見して対応するかどうかで予後がずいぶん違う。裁判所の保釈判断が今のままだと、治るはずの患者がなく亡くなっていく事態は、これからも起こり続けるだろう


>>>俺は、現役時代の仕事柄、大河原化工機も知ってるし、冤罪のきっかけとなった「噴霧乾燥機」のことも原理は分かる。

噴霧乾燥機:インスタントコーヒーやスキムミルク、化学薬品等を作るのに使われる。液状のものをヒーターで加熱した容器内に噴霧し、乾燥させて粉末を作る仕組みだ。

警視庁は、ヒーターを空焚きすれば生物兵器製造後、残った細菌を殺菌できる、という屁理屈を捏造し、生物兵器を輸出する際に必要な許可を取らないで噴霧乾燥機を無許可で輸出した、と大河原化工機を起訴したが、実験の結果、殺菌機能はないと判明。冤罪となった。

ただし、1回だけ生物兵器を製造して装置に残った細菌を殺菌しないという使い方は可能だし、また、装置を運転する作業員が残った細菌で死ぬ覚悟なら生物兵器は作れる。つまり、合理性や経済性や人命を無視すれば噴霧乾燥機で生物(細菌)兵器製造は不可能ではない。

生物兵器の素人が「こうすればできないわけじゃあない」という怪しげな理由を根拠に「生物兵器製造が可能」と断ずる。あまりの馬鹿馬鹿しさに、逮捕された大河原化工機関係者は「そんな馬鹿な」という態度だったろうし、それが警視庁のご機嫌を損ねたことは想像に難くない。

実は30年以上前、俺にも似た経験がある。米国の子会社に押し出し機と言う装置を輸出しようと窓口の経産省(当時通産省)に行った。担当者の屁理屈は「この押し出し機でテフロンの加工が可能だ、テフロンの加工品は毒ガス製造設備に使われる。つまり、押し出し機は毒ガス製造に関係するから輸出には許可が必要」、というものだった。押し出し機メーカーに聞くと「そんなの屁理屈だ。テフロンなんか押し出したら装置が腐食してすぐ使えなくなる」と言うが、俺は長いものに巻かれて許可を取ることにした。

俺は押し出し機の専門家ではない。だから押し出し機が通産省の役人に誤解され、いい加減に扱われても目をつぶることができた。大河原化工機の社長や社員のように専門科家・技術屋だったら、目をつぶれなかったのかもしれない。

この時の経産省の窓口担当者の態度が印象的だった。彼等は自分の主張する屁理屈に自信がないのだ。しかし、同時に下々の者に言い負かされることは許されない。隣の窓口では通産省の窓口担当者と侃々諤々口論をし、担当者をやり込めようとしていた人もいた。

俺は「ここで通産省の担当者を言い負かしてもいいことは一つもない。会社に迷惑を掛けられないから『長いもの』に巻かれて大人しく、お上の顔を立てとこう。」と思った。この輸出規制の根拠は輸出貿易管理令という政令だ。これに書かれていることは、曖昧・大雑把で噴霧乾燥機でも押し出し機でも何でも、役人の屁理屈・ご機嫌で輸出許可が必要になったり不要になったりする。極端に言えば、食い物、衣服以外なら大抵のものは、役人のさじ加減で「大量破壊兵器製造用に使えるから輸出許可が必要」という屁理屈を捏造できる。

これが日本の行政であり司法だ。もし、窓口担当者に賄賂を渡したり接待できるんなら、そうしてご機嫌を取り結びたいという誘惑・妄想にもかられた。そうやってる会社、人は少なからずいる。

俺の憶測では、この30年でますます役人のレベルは落ちたから、もっとぶざまな屁理屈を振り回すようになり、また、賄賂や接待にも弱くなっているのでないか?


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