東京都、指名停止中の博報堂・電通と随意契約 計約13億円
4月12日付け 朝日新聞デジタルより:
東京五輪・パラリンピックを巡る談合事件を受けて入札指名停止とした広告大手・博報堂と電通に対し、東京都がその後、入札のない随意契約で計約13億3千万円の事業を発注していた。都は「他社に代替できない事業で法令上問題ない」と説明する。しかし、信用失墜行為を理由に入札から除外した企業と、入札を経ずに契約した点について、指名停止の実効性を疑問視する意見がある。
両社は、東京大会の運営業務を巡って談合したとして独占禁止法違反(不当な取引制限)の容疑で元幹部が逮捕されたり、法人が同罪で起訴されたりした。これを受け、都は2023年2月、要綱に基づき、社会的信用失墜行為にあたるとして他の4社とともに指名停止とした。期間は24年8月まで。
一方、都入札情報サービスの公開情報によると、都は博報堂に対し、以前から放送している都提供の民放3番組の制作・放送事業を、23年3月、同9月、24年3月と計3回発注した。事業費は合計12億1千万円。番組ごとの内訳は、「東京サイト」(テレビ朝日)が1契約あたり約2億円、「東京GOOD!」「東京交差点」(いずれもテレビ東京)が合わせて同約2億円だった。
都政策企画局によると、いずれの番組も都の魅力などを紹介する内容で、放送は週1~5回、1回3分ほど。視聴率は3%台。番組枠の買い付けやタレント契約、撮影、編集などを委託した。
また、都は同社が開発した新型コロナワクチン接種記録システムの運用事業など3件も、23年3月に計約7千万円で発注(一部の期間短縮で計約5千万円に減額)。電通には、23年9月に、起業活性化を目的とした民放番組「TOKYO STARTUP DEGAWA」(テレビ東京、年2回、各1時間15分)の企画・制作を約5千万円で発注した。いずれも、特定の1社と結ぶ特命随意契約だった。
東京都は「代替できない調達に当たると判断した」と説明
番組事業の発注について、都は取材に対し、関係する一部の著作権が両社に帰属している点や継続性などを理由に挙げ、国の政令で随意契約可能とされる「代替できない調達」に当たると判断したと説明。博報堂からは、事前に「この時間帯に提供番組を流すのは博報堂しかできない」と言われたとも説明した。番組放送は啓発などの点で有効と判断し、指名停止を受けた番組中止の検討や、他社への代替が可能かどうかの放送局への確認はしていないという。
指名停止に関する都の要綱では、指名停止業者に対し、複数業者による競争見積もりを伴う随意契約は禁じているが、特命随意契約を禁じる記載はない。
この点について都の契約制度の担当者は、事業の政策的必要性を踏まえた上で、「各事業部署の監督において、その事業者と契約せざるを得ない場合に特命随意契約を認めている」と説明した。一方で、指名停止業者との契約は「理由を精査すべきで、(都庁内で)推奨はしていない」とも話した。
都事業の受注について、博報堂は取材に「守秘義務もあり、お答えする立場にございません」などと返答した。番組受注時の都側への説明の有無についても答えなかった。電通は「過去の実績を踏まえて都から指名を受け、適切な形で受託しております」という回答だった。他の指名停止措置4社への発注はなかった。(中村英一郎)
多くの自治体が例外規定を設けて原則禁止
博報堂と電通に関しては、談合事件を受けて、都以外にも各地の自治体が指名停止とした。このうち14カ月間の指名停止とした愛知県や、12カ月間の指名停止とした京都府は、その間、両社との契約案件はないと取材に答えた。
大阪府も両社への発注はないという。また、大阪市と作る大阪・関西万博の実行委員会は、指名停止を受け、以前から博報堂と約3年半の期間で結んでいた関連事業の業務協定について、代替企業を探した。だが見つからず、継続したという。
指名停止業者との随意契約は、例外規定を設けながら原則禁止とする道府県が多い。都の担当者は「都もスタンスは同じ」とする。
一方、関東地方の県の入札業務担当者は取材に「指名停止期間は業務改善を求める期間であり、入札、随意契約に関わらず契約先としてふさわしくない」と話した。「一般的な行政感覚として契約すべきでない」(中部地方の県)と話す担当者もいた。(中村英一郎)
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