山口瞳 対談集③ (串田孫一、大原麗子)

黄色ハイライト部に関する※俺のコメント

 1973年 櫛田孫一との対談:

山口:このごろ、まっすぐこう進んで寄り切っちゃうというようなお相撲さんは少なくなりましたね。

串田:そうですね。柏戸以来あんまりああいうのは・・・

山口:そうですね。一直線にパーッと行って・・・・

串田:止められたらもうだめだっていう。

山口:勝ったのにケガしたりなんかしましてね。

串田:そう(笑)

山口:柏戸がお好きでしたか。

※俺も柏戸好きだった。大鵬に組み止められて負けることが多かったんだが、時たま”電車道”で一気に押し出す・・・しかも蓄膿で、TVに映ると大概口を開けていた。相撲っぷりもこの姿も好きだった。

串田:そうですね。ああいうのがわりと好きでしたね。ルールを無視するような相撲っぷりってのはいいな。(笑)アゴ上げちゃいけないっていうのに、最後までとにかくアゴ上げてやってきたっていうのもいいじゃあないですか(笑)

山口:あのね、高橋義孝先生にね、お相撲が好きになられたころ、よくお相撲さんが先生のうちへ来たんですよね。こちらはどうもそういうことおもしろくないわけですよね。出入りの者としては。むこうへ金取られるんじゃないかって。こっちはお金もらう訳じゃないんですけどね。先生貧乏するのはそのせいじゃないかと思いまして。どうして相撲なんか贔屓になさるんですかと言ったら、だってね、おまえーおまえとはいわないけど、銀座の通りを小象を連れて歩いたと思って見ろって。こんな愉快なことはないって。(笑)

串田:創文社の大洞君なんんてのはね、電話をかけて来てね、ぼくが出るでしょう。「おいッ、おれ何でかけたんだっけね」なんて聞いたりする。(笑)「そんなぉと知りませんよ」なんて言われて「もうちょっとしたらかけますか」なんていうので電話を切る(笑)

串田:(海外に行きたくないという話から)ええ。オドオドするんじゃないかな。だれもいなければね、二人だけならいいんです。しゃべる前にみんなどいてくれればね、こんないいことはないと思うんだけども。(笑)とくに日本人なんかがそばにいたりなんかしたら。

※俺も米国で全く同じだった。日本人がいると、「あまりぶざまな英語はしゃべれない」と緊張した。

山口:そんなお殿様みたいに、いちいちお人払いしてたんじゃ大変だ。(笑)

串田:(ボーイが葡萄酒を注ぐ)これをちょっとこう・・・。

山口:飲んで味を見なければいけない。この先生は飲まない先生で・・・

串田:これ、困りますね。

山口:小笠原流じゃなくて裏千家で飲んで。(笑)

ボーイ:いかがですか。

串田:たいへんけっこう。

山口:わかったようなことをおっしゃるなあ。

串田:だめだから帰ろうなんて言ったりして、ねえ。(笑)

山口:だめだって金取るんですからだめよ。(笑)いつか、だめだからね。いいのとかえてくれといったんですよ。勘定見たら、返した分もちゃんとついているんですよ。(笑)それからさっきの残したやつ持って帰るっていって、もらって帰ってきた。そのときボーイさんが厭な顔をしましてねえ。

串田:ボーイさん楽しみにしていた。(笑)

僕は臆病でくだらないやつなんですがね。いま講演ということは全部お断りしているんですけれど、日赤の看護婦さんの学校で、記念祭みたいのがあって、そこで話をさせられてね。題が「うそ」っていう題にしておいたんです。で、僕も前の晩一生懸命、明日死ぬっていうころがわかっている病人にね、看護婦さんがうそをつかなくちゃならないでしょう。そのときのうそについて話そうと思って題をくっ付けたんだけど、フラフラと壇へ上がってから変な気が起きちゃってね、ぼくがちょっと前にフランスにいたときに、ブルターニュ半島っていうのがありましてとやりだしてね。そのちょっと前にジイドの「ブルターニュ紀行」なんて言うのを読んだものですから、地名なんてかを思い出したんですよ。そこで、こっちで言えば漁師の家なんだけど、二階が部屋があいているから借りて、一か月ほどいましたなんて話をしてね、時計見たら1時間過ぎちゃって、それで終わっちゃたことがあるんですけれどね。

山口:全部うそなの。

串田:面白いのは、新学期が始まったら自首させようと思ってたっていうの、どういうんんでしょうかねぇ。

山口:みんな年度末とか二学期からとかって癖がついちゃって(笑)

串田:そうなんだろうなあ。あれはほんとうにね。面白いと思ったな。それはよく学生で問題を起こしてね。下宿の人の借りてる火鉢を売っちゃったとかね。質に入れたとかいうような問題はね。新学期になってからていうことはありましたけどね。しかし人殺してるのを、やっぱりみんなあれかなあ、そういう気持ちになるのかなあ。

山口:一学期の終わりに講義が終わってから殺して、二学期のはじめに自首しようなんて。

死ぬっていうのも一つの事業だっていう感じがしますね。

※終活して準備しなくっちゃ

串田:そうなんですよ。大事業でしょう。

山口:大事業ですね。万事親類なんかも円満に納めて・・・

※串田孫一の著作を読んでみたくなった。


1979年、大原麗子との対談

大原:どうもはじめまして。

山口:きょうはあなたに扇子をあげようかと思ってきました。ご病気(ギランバレー症候群)が治るようにと、お地蔵様がかいてあります。すごくご利益がありますからね。

母はとてもそそっかしいんですね。すぐ「ね、今度の日曜日、何曜日?」って聞くんですよ。(笑)「あのネコ、犬?」って聞くんですよ。当人は「今度に日曜は何日?」って聞いているつもりなんですね。「あのネコなんて言う名前?」が「あのネコ、犬?」になっちゃうんですね。

※俺も似たような言い間違いは多い。俺はアルツハイマーだと思っていたがもしかするとそそっかしいせい???

大原:確かにあの本読んでまして、お母様はかわいい方だな、という感じを受けました。あの中で、先生の奥さまが拭き掃除をなさっている時に、うつむいて雑誌を読んでらしたお母様が「ねえ、ついでに私の足も拭いてちょうだい」とおっしゃる場面、いいですね。あれ、

山口:行くところないのね。女っていうのは。私の母でも、本来は遊郭のある大きな店を継がなければならない立場にあったわけですね。そういう女の意気込みというのは、ちょっと普通の人と違うんじゃないかと思いますね。特に長女は。大体、旅館だとか、ああいう料理屋とか遊郭なんていうのは、女がやるわけですからね。まあ長女と次女でもずいぶん違うでしょうけれども、そもそも気構えが違うんじゃないですかね。何でもしょって立つというような。親類でも友達でも、みんな面倒を見ようというような・・・。やっぱり女っていうか主婦っていうのは家をしょって立つという感じあるでしょう。全部面倒見ちゃうんですよ。そういう感じっていうのが、今非常に薄れているように思いますけどね。

※ジェンダー満載。だけど、これは女性蔑視でなく、女性賛歌だ。それでもダメなんだよね。21世紀の日本では。

大原:先生は、食べ物屋さんに行っても、残した場合には、まずかったわけじゃないんだと職人さんに行って帰るそうですね。でも、そんなに気を使ったら疲れますねえ。

山口:ヘトヘトになっちゃいますよね。タクシーに乗っていて、メーターが家の前で上がるでしょう。ああ、よかったと思いますよ。

大原:上がらないと、とてもいやですか。

山口:出そうで出ない時ってあるじゃないですか。僕の友達にカチャと上がると寿命勝縮まるというのがいるんですけれど、僕はああよかったと思いますね。実にキザに聞こえるかも知れないけど、そうじゃないですね。サービス業の方には何か少しでも、こちらが痛い目に会っても得さしてあげたいという気持ちがとても強いですね。

大原:なぜですか。

山口:さあ、なぜですかね。例えば床屋さんでも美容院でも、人の体に触る商売っていうのいやでしょう。役者だとそうはいかないかも知れないけれども、僕、とても気の毒だという気持ちがあるんですね。なぜかわかんないんですけど、身についちゃってるんですね。それで随分笑われたり、かえって怒られたりして。

※俺は気の毒とは思わない。プロなんだから。

お酒を飲んでモテる秘訣っていうのは?

大原:やっぱり面白いひとがモテるんじゃないですか。

山口:確かにねえ。もうちょっと僕なんかも陽気にならなきゃならないんです。

大原:面白いじゃあないですか。先生。

山口:そうですか。今度もっといい扇子をもってこなきゃ。(笑)


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