All of meを聞き比べる その2
1954年以来70年間にわたって New Port Jazz Festivalという催しがアメリカ北部のロードアイランド州(避暑地?)で毎年夏に行われている。(来年もやるみたいだ)1958年に行われたこのFestivalの様子を記録した「真夏の夜のジャズ(Jazz on a summer’s day)」というドキュメンタリー?映画がある。確かにドキュメンタリーでもあって、Jazzを聞きに来た老若男女の人たち(白人主体だが黒人も少し・・・というのは、当時こんなものを、金を払って見に来るなんていう贅沢ができる黒人は少なかったと思う)の生態というかジャズの楽しみ方も記録されており、当時のアメリカの様子を垣間見ることができる。だがしかし、俺にとってはやはりジャズを楽しむ映画だ。
この映画のジャズパフォーマンスの白眉はDinah WashingtonのAll of meであろう。
Blue Mitchell(tp),Urbie Green(tb),Terry Gibbs(vib),Wynton Kelly(p),Max Roach(dr)…と書いていても豪華だなあ、と思うメンバーの歌伴で歌う。この手の催しのときはこういう豪華な歌伴が成立する。というのは大物ミュージシャンがたくさん集められて「一丁みんなで」みたいに、普段なら絶対ありえない大物ミュージシャンの共演があるからだ。
Dinahの顔を外して、着ている白いドレスだけのアップ。楽しそうに踊る若い白人男女。黒人差別と闘う闘士という硬いイメージのMax Roachのリラックスした、楽しそうな笑顔。客も演者もノッる感じが伝わって来る。張り切ってビブラフォンを一生懸命弾いているTerry Gibbsの隣に行って「私にも弾かせて」とばかりに、二人でビブラフォンを演奏し始めるDinah。白人男性のGibbsと黒人女性のDinahの楽し気な共演。観客も白黒、老若男女いる。後年の「やらせ」感漂うダイバーシティーでなく、自然だ。音楽の力だ。
我がAnita O’Dayはレギュラーの伴奏メンバーで歌う。実はAnitaが出てるからこの映画を見たいと思ったのだが、この映画のAnitaの出来は悪い。1919年生まれだから当時39歳か。なんかものすごく老けた意地悪ばあさんみたいに見える。この年の4月にAnita O’Day at Mr. Kelly’sというレコードをライブで録音しているが、このとき、Tea for Twoを歌っていて、その歌の伴奏からの「外し方」がものすごく新鮮だった。Anitaはこの映画でもTea for Twoを同様の歌い方で歌うのだが、客の反応がイマイチなせいなのか、投げやりな感じが。この歌い方では踊ることもできないし。いつものメンバーでいつもと同じ歌い方に飽きたのか?Anitaみたいな芸人は一歩間違えると裾が汚れた商売女みたいになってしまう。一方、Dinahは1924年生まれの34歳。Dinahの方は老けた感ゼロ。歌うのが楽しくて仕方がない感じだ。
閑話休題:
1960年を控えたアメリカは豊かでGreatだった。この映画全体から「リラックスして楽しもうぜ~!」という当時のアメリカのパワー・余裕を感じる。今から振り返れば、1957年に、スプートニクショックはあったものの、黒人の公民権運動も、キューバ危機も、ケネディ暗殺も、ベトナム戦争・・・たくさんのややこしいこと、まずいことはまだだった。
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