農民作家・山下惣一

 1960年代、農業水産省(当時の農林省)がミカンを作れ、ミカンは儲かる、と”指導”したことがある。それを真に受けて結婚式の翌日から山を開墾しミカン畑を作った男がいる。皆が一斉にミカンをつくったのでミカン価格が暴落、その男は指導員に食ってかかった。”指導員”は言った。「確かに”指導”はした。しかし、その通り実行するかどうかはアンタの責任だ」・・・農民作家・山下惣一が書き残した。

山本七平さんも言う通り、「あたかも自分の頭で考えだしたように」指導する人がいて、その通りにやって失敗したってこのザマだ。「あたかもそれを履いて生れて来たように」ハイヒールを履きこなしている人を真似てハイヒールを履いて転んで怪我しても、怪我した人の”自己責任”だ。

お国やコンサルや評論家や文化人、ファッションモデル・・・が言うことを真に受けて何年後かに悔恨するか(山下さんお場合はミカン畑を悔恨して数年後に悔恨・・・)は運次第か?

悔恨したくないなら、他人が言うこと、流行ってることに乗るまえに自分の頭で考えるしかないだろう。結果、失敗したら、「なんであの時よく考えもせずに、あんなことをしちゃったんだろう」と悔恨するのではなく、「あの時の俺の考え方のどこが間違っていたのか?」と反省することだ。

さて、NHK「日本人は農なき国を望むのか~農民作家・山下惣一の生涯」で一番印象に残った山下さんの言葉は『田圃は食物連鎖の場になっている。米は輸入できても食物連鎖は輸入できない』だ。林業も同じ。国土保全の基本になっている。

食物連鎖にしろ、国土保全にしろ、いずれ商品化され、輸入されるようになるのか?ロシアでは(多分アメリカの方が古いのだろうが)ワグネルなんて言って戦争も商品化している。資本主義って「課題」を見つけてはそれを解決するという謳い文句であらゆるものを商品化してやまない病気(業)だ。課題は自分で生み出す、と言ってもよい・・・マッチポンンプ・・・マルクス様の言う通りで課題解決の中に次の新しい課題が内蔵されていて、課題が解決したと思ったとたんに次の課題が生まれて来る。

番組の最後は、「これからの農業は”小農”(=Family Farming)だ」「成長より安定、拡大よりも持続、競争より共生」で終わっている。山下さんは子供の時やらされた「肥かつぎ」が嫌いで農業が嫌いになり家出までした。しかし、結局、当時の「家族でやる自給自足に毛が生えた程度の規模の有機農業」に戻る、ということだ。

俺は会社組織で大規模にやる農業にも希望がありそうな気がしてるが、確かにこれは農業の商品化で、碌なことはないかもしれない。会社となると、成長だ、拡大だ、競争だと言うだろう。一方、小農の最大の問題は後継者だろう。若い人が、大好きな「成長」を捨ててまで農業しよう、となるか???・・・「成長」に疲れ、後ろを向く若者もいるだろうが・・・全日本棍棒協会会長みたいに。同時に「毎年同じ時期に同じところで同じことをする」農業にも成長ってあるのではないか?という気もする。

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