マーク・ゲイン著「ニッポン日記」より

 アメリカの新聞記者、マーク・ゲインが敗戦直後の日本に駐在し、占領下の日本を描いた日記が「ニッポン日記」という名前で出版されている。その一節を引用する。日本の実情を知らないトルーマン大統領が日本民主化の第一歩として財閥を解体せよ、という理想論を掲げた。それに対してGHQの現場課長は「なにも分かっちゃいねえ」と反発する。結局、財閥は一旦は解体されるが、以下引用の通り、ソ連と相対するために復活した。財閥なしで日本はソ連と戦う即戦力にはならない、という判断だった。

1946年2月21日、GHQ産業金融課長のロック少佐と昼飯を食べた時、ロックが言った。「私は親日的に見えるかも知れないが、けっしてそうじゃない。私は今度の戦争に3年も従事した。今は、日本にその産業機構をそのまま保持させ、また生産もさせ、輸出もさせながら日本を転向させる、大きなチャンスである。目下われわれはわが政策の何たるかを解しないままにこの仕事を仕損じかけている。われわれは日本をわれわれの経済的な奴隷にしようとでもいうのか?日本を農業国たらしめようとでもいうのか?それともわれわれは日本に自立を許そうと言うのか?財閥を解体することなどは易々たる仕事である。が、古い財閥を叩き壊せば、きっと何か新しい形の財閥が出来上がる。なぜなら誰かが日本の経済機構を動かさなくっちゃいけないからだ。私は決して財閥を擁護しているんじゃない。彼らは日本の侵略の背後にあった。今日彼らは依然として日本政府を支配している。が、他に何か代案があるか?財閥を破壊してみたまえ。十年間は混乱を覚悟しなくちゃならないか、社会主義経済の実施のほかはない。財閥系の銀行を一掃してみたまえ、全金融機関は壊滅する。財閥を粉微塵にしてみたまえ、日本におけるわれわれの投資領域は壊滅する。東京の実業家たちが昔の日本を復興させることを望んでいることはご承知の通りだ。わが軍関係の人たちも、財閥をそっとしておけば、頭痛のの大部分が解消すると考えている。『殺した米兵一人に対し旋盤1台づつを支払え』と今日本人に言うのは馬鹿げきっている。やつらにやつらの古ぼけた旋盤をそのまま持たせておくほうが、二、三年うちにアメリカのセールスマンがやってきてわれわれが本国で使っているのよりも新しい機械をやつらに売ってやるのよりはるかにいい。また中国人やフィリピン人に日本の新しい機械をやるなんてなおさら無意味だ。彼らはうまく使えもしなかろうし、おまけに、われわれと競争をおっぱじめるだけだ。まだ他にもある。自分自身をはぐらかすのはやめよう。われわれは強力な日本を必要とする。なぜならわれわれは近い将来ロシアと相対さなければならないし、同盟国を必要とするにいたるだろう。日本がそれだ。」

※二、三年うちにアメリカのセールスマンがやってきてわれわれが本国で使っているのよりも新しい機械をやつらに売ってやる・・・実に示唆に富んだ言葉だ。1990年代~2000年代、アメリカのセールスマンに限らず、世界中のセールスマンが中国に最新の技術を売り、工場を立て、見事に中国との競争に負けた。

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