神保町散歩①
このブログによれば、昨年11月に上さんと神保町に行った。それ以来だから4月14日、5か月ぶりに神保町界隈を歩き回った。昼飯を一緒に食べるべく、午後1時に上さんとお茶の水駅で待ち合わせ。それまで一人で午前9時半から3時間半、歩いては古本屋をのぞき、古レコード屋に寄る。結果、この日丸一日で15000歩歩いた)
相変わらず建て替えられているビルが目に付く。俺の好きだった古き良き神保町の風情がどんどん失われていくことだろう。それでも1軒、新しくできた古本屋でいいのを発見。それから50年以上営業を続けている古レコード屋が健在であることも確認。嬉しくなって、「ご祝儀」で、古本屋では5冊1540円、古レコード屋では9枚3700円の買い物をした。(1冊あるいは1枚300円とか500円とかで売られているとついつい買ってしまう)家に帰って来て計量したら、本が2.1Kg、レコードが2.4Kgあった。これを抱えて歩き回ったのだから疲れた。
購入した古本は:
山本七平 「日本人とは何か。」 ¥440
結城昌治 「志ん生一代」上・下巻 各¥220
色川武大 「ばれてもともと」 ¥330
歴史読本 2002年8月号 特集天皇家125代 皇位継承の真相 ¥330
買った店の住所・名前はレシートを紛失したので分からなくなった。(地下鉄・神保町駅から靖国通りを駿河台下に向かって歩き、駿河台下の手前で左に折れ、明大通り方向に向かう道を少し入ったあたりにある古本屋。)確かカタカナの名前がついていたから昔からある古本屋ではない。気に入ったのは日本の歴史、落語や映画・演芸といった関係の本が充実していたこと。これだけ俺のニーズに合った品ぞろえの店は珍しい。
「日本人とは何か。」は<東アジアの最後進民族><縄文人とは、いかなる民族か>から始まり、なぜ<日本人は明治維新に成功したのか>に至る、日本人論。七平さんの本は全部読んだつもりでいたが、これは読んでいなかった。
「志ん生一代」は以前借りて読んだと記憶するが、「座右に置くべき名著」と思って購入。
「ばれてもともと」は多分読んでない。色川武大さんも大好きで大体読んだつもりだが、未読だと思う。絶筆の「好食つれづれ日記」を含む、最後のエッセイ集。色川さん、1989年4月に死ぬのだが、3月末に岩手県一関に引っ越してすぐ心筋梗塞で入院、10日後に60歳で亡くなった由。この、死に至る経緯は知らなかった。60歳はいかにも早いが、色川さんの場合、「それもありかな?」と思わせる生き方ではあった。それにしても何故、一関くんだりに引っ込んだのか?「好食つれづれ日記」に”かねがね、老耄(ろうもう)したら都会を離れ、晴耕雨読の生活に入りたいと思っていた。たまたま縁あって岩手県一関市内に家を借り”・・・云々とある。多分、色川さんの大ファンの縁(紹介)で、一関に引っ越したんだろうと思う。この、一関を紹介した人はどんなに苦しい思いをしただろうか?またどんなに後悔しただろう。(”自分が色川さんを殺した”と思ったのではないか?)色川さんは、これも俺の大好きな向田邦子さんが台湾の飛行機墜落事故で頓死した時、「あの人は幸運が続きすぎたせいだ」と語ったとか。自分の死も運を使い果たしたからだ、とでも思っているのか?人生をプロ麻雀に例え、プロ麻雀を相撲に例えた「9勝6敗を狙え」・・・8勝7敗を狙うと負け越すかも知れない。負け越しちゃあ飯の食い上げ。いつも10勝以上したら一緒に麻雀してくれる仲間がいなくなって、これも飯の食い上げ・・・という色川さんの味のある名言は俺の座右の銘だ。いくら技術や運があっても、飯を食うためにはほどほどが大切、それがプロということか。ゴルゴ13みたいなプロもいいけど、色川流のノンシャランなプロもいい。
それにしても、色川さんの死後発行されたこの本は変わっている。前書きもなければ後書き、解説もなし。目次があって、いきなり色川さんの「いずれ我が身も」から始まり、「好食つれづれ・・・」で終わる。愛想なし。でも悪くない。
「特集天皇家125代 皇位継承の真相」は俺の日本人(論)研究に必要な資料。色々怪しいところはあるが天皇家が1000年以上続いている。科学的に間違いなく続いている血統と言えるかどうかは半信半疑だが、移り気な日本人が、天皇(家)というフィクションをこんなに長い間愛し、神(上)とあがめ続ける。不思議だ。ここに日本人論の神髄・核心があることは間違いない。俺に言わせればキリスト教徒が神というフィクションを信じるのと同じくらい不思議。そして皇位継承を巡るお家騒動や陰謀や殺人・・・もめごとが嫌いで「和を貴ぶ」日本人を代表し・象徴する天皇家の歴史は、私利私欲、喧嘩、足の引っ張り合いの歴史だった…陰湿だったり乱暴だったり・・・これも興味深い。そして藤原氏、平氏から徳川に至る武士たち、そしてマッカーサーも、何故天皇を廃し自分が天皇に代わろうとしなかったのか?天皇は武力的にはほとんど丸裸なので彼らなら簡単に殺すこともできたはずだが、やらなかった・・・これも不思議。
レコードを買ったのはdisk union。この店は50年来の付き合いだ。俺が最初に行ったのは確か1971年。結婚する前は月に1回は行っていたのではないか。今はせいぜい年1回。1971年当時はお茶の水に1店しかなかったと思う。今はお茶の水・神保町界隈だけでも数店舗。1970年代~1980年代、新宿その他にも出店した。新宿店にもよく行った。俺の知る限り現時点ではジャズレコードの枚数では日本一ではないか?・・・レコードなんてもうほとんど新譜が出ないから圧倒的に中古が多い。日本人だけだと思うがレコードにも神様が宿るから「音が出りゃあいい」というものではない。オリジナル盤を神様のようにあがめ、珍重し、何万円という値が付いても買う”信者”がいる。「俺は音が出りゃあいい派」なので何百円のレコード専門。
Wikipediaによればdisk unionの前身は1941年創業の「ユニオン商会」という自動車輸入業者。それがレコード販売も始め、1967年独立して「ユニオンレコード店」となった由。レコード屋、古レコード屋がどんどんなくなっている中「残存者利益」で行き場を失った古レコードがどんどんdisk unionに集まっている感じ。つぶれずに生き残ったのは「いいレコードをリーズナブルな価格で買える」という当たり前の理由だと思う。(もちろん、”オリジナル盤信者”にも目配りして何万円もするレコードも売っているが…)その当たり前の理由で俺も50年来の付き合いをしている。
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