続・会社とは何か?

 昨年末から年明けにかけて「会社とは何か?」を再考させられる出来事があったので、以下。

会社の後輩たちの年賀状などに「会社についていけない、勘弁してくれ」といったニュアンスの文句が書かれていたものが散見された。どうも二人の「外人」についていけないらしい。一人は2年前にスカウトされて入ってきた文字通り外人の社長。もう一人は外資系を転々とし、5年前にスカウトされて入ってきた、人種的には日本人の女だがほとんど外人の人事担当役員。

社長は乗り込んできたときの売り文句が「今まで会社を支えてきた事業は将来性がないから売る」というショッキングなものだったが、これが実現できてない。最近は「会社は株主のもの。株主に評価されてなんぼ」と言い、出来の悪い社員をくさしているばかりだそうだ。

人事担当役員はジョブ型人事制度なるものを始めた。これは、従来各部署は社員に「背番号」をつけ、一生その部署に所属させて部署を支える専門家に育て上げるという人材育成制度だったものをやめ、公募制で社員は勝手に自分のやりたい仕事、部署を見つけて自ら異動を申し立てるさせ、自分でキャリアを積んでいくと言うもの。

俺の後輩の部長さんは公募での異動を前提にすると自部署の業務を素人が来てもすぐできるようマニュアル化しなくてはならない(最近の若い者の風潮としてマニュアルというより、どうしたらいいか分からず困ったら教えてくれるAIのようなものが欲しいらしい)がそんなことはできないと言う。他部署から来た素人のやることだから仕事の出来に不安があろう。また、自分を含めおじさんたちは突然「やりたいことを見つけて社内で色々な部署を転々としてキャリアを積め」などと言われても、うろたえるだけ、とも。

この”外人”二人に共通することは以下の”資本主義の原点”でいうアントレプレナーが不在であること。

資本主義の原点:

「どうしてもこれをしたい」「他人に負けたくない」「一歩先んじたい」「石にかじりついてでもこれをやり遂げたい」などといったアニマルスピリットを持ったアントレプレナーが自分のやりたいことをプレゼンして金を出してくれる人(株主)を探す。金が集まれば実務をやってくれる人材を雇って会社・事業を始める。期間は原則有期限で、期限が来ればうまくいっていてもやめることもあるし、会社を売り払うこともある。もちろん続けることもあるが…うまく行かなければその時点で止める。戦後日本はこの資本主義の原点を捻じ曲げ、会社に徴税、年金、健康保険といった本来政府が行うべき仕事を押し付けた。ほとんどの会社はこれをうまく実行したばかりかあまり潰れることもなく、低い失業率を守り社会の安寧秩序の維持に貢献した。政府もこれだけうまく機能したやり方を簡単にやめる訳にはいかなくなった…日本では会社は無期限に続くことが前提となった。

これを踏まえて俺から後輩部長さんに送ったエール以下:

社長は社員の悪口ばかり言っていても仕方がない。社長自身、歌い文句の事業売却はできていない。株主を一番裏切ったのは彼。そもそも儲からない事業を売るだけでは会社は生き残れない。アントレプレナーが必要。アントレプレナーを捜している様子が見えない。社内にいなければ社外に求めるべきだし、儲かりそうな会社を買ってもよいが、そういう努力をしているのか?

ジョブ型人事制度を始めた人事担当役員は入社して5年もたつのだから模範となって、彼女自身が社内で人事以外の職務を担当して新しいキャリアを積むべき。彼女は人事専門でキャリアを積み、そのキャリアを売りにして会社を転々としてきたのではないか?どうして「この道一筋」より「社内で様々な業務をつまみ食い」する方がいいのか?こんな社員ばかりでは社員には居心地がいいかもしれないが会社は競争に負ける。もしかすると彼女は「こんな会社、つぶれた方がいい」と思っているのかも。

最近の若者にも「石にかじりついてでも」「負けたくない」というアニマルスピリットはある。将棋の藤井聡太はAIで勉強したというがAIを先生とかマニュアルとか考えたのではないはず。「負けたくないライバル」と思い、勝つために寝食を忘れて勉強した。サッカーその他スポーツだってそれこそ「相手より一歩早く」と厳しい鍛錬に耐えている者がいる。そして彼らがいい結果を出せばそれに憧れるもっと下の世代とその親が現れるという循環が生まれる。

若手社員の多くはジョブ型人事になじむ奴らかも知れないが数は少なくても必ずアニマルスピリットを持つ奴がいるはず。これを捜して温存・育成する。もし社内にいなければ社外で探し求める。ジョブ型人事制度に逆らってそうすることが部長の仕事。できれば仲間を募って。

それにしても、このジョブ型人事制度っておかしい。奇怪な代物。会社の方針として「専門馬鹿」を作らずゼネラリストを育てたいと言うなら社員自身の希望でなく、会社の人材育成方針や人材需要を踏まえて一人一人をどう育成するのかが考えられるべき。逆にベストの専門家を欲しいのなら社内のみならず、社外からも専門家をスカウトしてくるべき。いずれにしても社員のご希望ばっかり聞いていたら会社は潰れる。

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