会社とは何か?再び  なぜ仕事がツライのか 燃え尽き症候群生むシステム

 俺は2019年に退職したが、MAを繰り返していた社長がその種が尽きたのか今度は外部から役員を呼んできたりしていた時期だった。俺の退職する前年くらいに人事担当役員を外部から取り、ダイバーシティーとやらをやらせていた。俺は退職の時「悪いことではないし、違法でもないけどこんなに部下を信じられない社長には俺にはついていけねえ」と思った。俺の退職した後、とうとう外人社長がスカウトされるに及び、「面白くないことも多かったし、燃え尽きた感もあるけどギリギリのタイミングで会社をやめられたなあ。」と感じ、胸をなでおろした。そして昨年末から今年の正月にかけて会社の後輩(現役)たちの「もうついていけない」といった声が聞こえるようになった。どうも人事担当役員と外人社長が原因らしい。

俺は現役時代、部下に対して俺の行う評価や人事異動でその人の一生が決まってしまうかもしれない、下手をするとその人が鬱になったり、自殺することになるかもしれない、と恐れた。(「無限責任」を感じた。)だから評価や異動には全身全霊、頭の毛が白くなるくらい悩み苦しんだ。ここで言う“評価”とは、人事部に言われて行う定期的な人事考課のことではない。俺の会社の人事考課は成果主義のしっぽを引きずっており「決められた給与枠を一人一人にどう振り分けるか?」という目的のために行われていただけだったから俺は馬鹿にしていた。また、ここで言う“評価”とは、昇給や昇格といった薄っぺらなものではない。その人に、いつ、どこで何をさせるか?(残念ながら全員の定年までのキャリアを描くことは出来なかったが、せめて次は何をさせるか?)を検討するためにその人の性格・得意不得意・実績・家庭の事情などの情報を仕入れ、整理し、頭に叩き込むことであった。こんなことを何年もやって疲れ果ててもいた。もう勘弁してくれ…後輩にこの仕事を引き継げたのでやめることができた。

苦しんでいる現役の皆さんを励まし慰めるべく、悩みの種の社長や人事担当役員に対する揶揄を述べ立て、打たれ弱い最近の若者は相手にせず、打たれ強い奴だけ相手にして…などと書き散らしてみたが、何かすっきりしない。そんな思いを抱えたまま、119日、NHK BS世界のドキュメンタリー 選▽なぜ仕事がツライのか 燃え尽き症候群生むシステム という番組を、タイトルにひかれて見た。フィンランドで2022年に制作されたドキュメンタリー番組で、燃え尽き症候群にかかっていたと自覚しているフィンランド在住のミレニアル世代の会社員と思しき人が56人集められ、その経験を語り合い、途中で学者が見解を述べるという形で進行する。これを以下の通り、なるべく忠実に文字起こしし、箇条書きにした。(赤字部分は俺の追加・アイデア)なお、ミレニアル世代とは1981年~1990年に生まれた世代で人類初のデジタルネイティブ世代のことらしい。

 

・第二次世界大戦中にアメリカで戦時下の敵への妨害工作として作られた“サボタージュ・マニュアル“…これを今の会社は実践している

    可能な限り仕事を中断

    重要な仕事の最中に会議を設定

    書類を増やす

    決定は全て委員会に諮る

    関係ない話題の“演説会”を催す(=仕事と関係ない不必要なセミナーに参加させる)

    承認者は一人でいいのに三人配置

 

1930年代、工業化はいずれ明るい未来をもたらし、人間は週15時間も働けばよくなるなどと信じられていた。ロボットや自動化が人間を単純な農作業や過酷な工場労働から解放すると。

・週15時間労働は可能だがなぜ、そうなっていないのか?

オフィスワーク・管理職なるものを発明し、そういう仕事の従事者が増えたから。

・アメリカ、ブラジル、スウェーデン、ドイツ、ケニア、イギリス、韓国、フランス、日本でギャラップが調査した結果:

これらの国の被雇用者の20%は前向き(engaged)

61%は前向きでない(not engaged)

19%はとても不幸で雇用者に反抗的(so unhappy and against employer)

“前向き”が最も多いのは米国35%、最も少ないのは日本7.5%

“前向きでない”が最大はスウェーデン70%、独仏日も70%近い。最少は米国55%。

“反抗的”が最大はケニア、日本で22.5%。最少はスウェーデンで10%

“前向き“から”反抗的”を引いた数字がプラスなのはアメリカ、ブラジル、スェーデンの3国。

プラスマイナスゼロはドイツ。

ケニア、イギリス、韓国、フランス、日本はマイナス。

最大はアメリカで+25、最少は日本で-15。

 

・仕事をこなすだけでなくやる気に満ちて会社にも満足しているふりをしなくちゃあいけない

・会社では仮面をかぶって感情・自分を露わにしない…上司も含めみんなで茶番劇・仮面劇を演じている

1978年以降CEOの報酬の伸びは1322%、労働者の伸びは18%…アメリカの話?…出典不明(ノキアはイーロップCEOになって49億ユーロの損失を出したが、彼の退職金は2500万ユーロ。)

 

・会社で辛い思いをし、我慢して仕事をしている人に「自分の心理状態を他人に話すか」と聞くと全員「話さない・知られたくない」と。彼らに言わせると彼らの心理状態を言い表す言葉は「燃え尽き」。

・おじいさんのエンジニアの仕事に憧れて一生懸命一心不乱に努力したがある日「燃え尽きた」。自分は敗北者、おちこぼれ、と思い、自分を責めた。こんな出来の悪いのは自分だけ、できないのは能力がないとかサボっているから、と思い込み“頑張って”しまう。そして肉体的にも精神的にも疲れ切ってしまう。周囲には同様の人がたくさんいるが、みんな作り笑いを浮かべて平気な顔をする。おじいさんの時代はエンジニアと言わず多くの仕事が人間にとって価値があり、また満足を実感出来るものだった…それが株主とか市場価値とかなんとか言い出すようになってそうではなくなった。(逆に言えば、会社における仕事で多くの人が価値を感じ満足していられた幸せな時代には会社の価値や株主なんて考えることはなかった)…駄目になった会社を売り買いしようと思えば「会社は株主のもので、株主が会社を売り買いする」という理屈があると都合がよく、会社がいくらで売れるか、その価値が問題になる。

・燃え尽き症候群の患者は「自分は出来るはず、できないのは自分が悪い」と思い込む。自分の置かれている環境や職場が悪いとは思わない。自分は強いから燃え尽きるなんてことはない、と思い込んで“頑張って”しまう。

・二人に一人は燃え尽き症候群。これがミレニアル世代では5人に3

・職場に行くのが恐く、車にひかれて死にたい、と思う。

・一つの会社で長続きしないのは自分のせい…会社や環境が悪い、とは思わない。

 

19世紀に生産現場でマネージャーという新しい役職が生まれた。彼らは労働者は歯車と考え効率化を第一とした。1970年代後半、株主価値の最大化が企業の目的となり、会社は生身の人間のいるところとは認識されなくなり、そこで働く人間は数値で表される人的資源であり、経営資源の一つとなった。歯車ですらなくなり、データとして扱われる数字となった…会社は生身の人間が働く場ではなくなり、株主によって売り買いされる「もの」になった。

・多忙を極めストレスにさらされるのも数年なら耐えられる(例えば企業のスタートアップの時など)が、これが当たり前で際限なく続くようになっている

・組織が自分に何を求めているのか分からないまま働く人が多い(半数)…組織自身が何を求められているのか分からないという場合もある。すでに存在意義を失った組織・会社に属している人間は最悪。

 

・管理職は勤続年数か過去の成績で選ばれる。そんなものは管理職に求められる資質ではないのだが…一方で管理職になれば給料と達成感が上がるから、みんなが管理職になりたいと思うのは当たり前…管理職向きでない人を管理職にしてしまうことも多いし、管理職になったら“頑張る”。

・部下の成長を考えもしないマネージャーは最悪だが多い。

・業績を上げようとコンサルを雇うが実際に変化が起こるとは限らない

・個人的な会話ができるマネージャーがいると仕事に意欲が湧く

・自分の妹は自由奔放と言うか「自分探し」をずっとしているが長女の自分はエリート・いい子で社会の期待に応えようとし、いい成績を取り、いい会社で頑張ろうとしてきた。自分で何かが欠けていると思う一方、その思いを払しょくするためにますます頑張った。

 

・教育とは幼心に芽生えた自然な好奇心を破壊する

・初等教育で自然な好奇心が叩き潰されている

・小学校の決まりごとの多くは工場労働者を育成するためのもの…今や、工場労働者なんてそんなに要らないのに。

・意味など分からなくても言われた通り働く人間に仕立て上げるのが学校

・ちょっと考えれば誰でも変だと思うようなことを、おかしいと感じることのないように教育する場が学校…将来会社で読まれない書類を作ったり、偉いさんに合わせたりすることも(が)仕事だと考えるように教育する

 

・自分の力で周囲に影響を与え、変えることが出来ると思うことが「自分を人間だ」と思うこと。周りとは違う存在なのだと。そうしたことを感ずる機会が奪われると人間は崩壊する。

・労働の価値や意味が見いだせない

・市場経済の認める価値と自分の考える価値の不一致…何かが大きく違っている

・世の中の役に立ち、かつ自分の心の中にある何かを深めていくのが労働

・会社に選ばれたと思うと、会社が自分だ、みたいになってしまう

・働くことが自分の生活を破壊する(私生活を犠牲にしてまで会社に尽くしてしまう)

・いくら尽くしてもある日突然リストラされる…不安で働きすぎるようになる

・実際どうか?ではなく、どう見られるのか?が大事

 

CEOが実績を誇示するためにリストラすると、何も変わってなくても株価が上がる

…60%は何も変わらない…CEOは株価が上がりさえすればよい

・リストラやM&Aで解雇される人はもちろん、解雇されずに残った人も大きなストレスを感じる

 

・実際に目に見える仕事、確実に人の役に立つ仕事ほど報酬が低い(病院の清掃員は賃金の10倍の価値を生む、保育従事者は賃金の7倍の価値を生む。ロンドンの銀行家は賃金の7倍の価値を毀損する…byニューエコノミクス財団)

・OECDの統計では1995~2013年の生産性の向上は30%。賃金の向上は

15%…このギャップ(差益)は1%の富裕層に渡り、投資に回されている

・物価の値上がりほど賃金は上がらない…ミレニアル世代は親の世代の同年齢時より

40%貧しい(セントルイス連邦準備銀行調査)

 

・仕事量が多くても裁量権があり、成長が実感できればよい

・自分の仕事は世の中の役に立っているとは思うが、見合った報酬が得られない…報酬は金だけでなく、社会的認知であり、感謝。「君のおかげで助かった」の一言。

・需要があるのにやり手がいない仕事を不得意・不向きな人がやる→オーバーロードになる

・相互依存できる環境(コミュニティー)…AIやITでなく、人間に助けられる環境

・大切にされている感

・現状、ロボットやAIで非人間的な仕事、つまらない仕事はなくなっていない。仮にそうなって休みが増えたって時間を持て余し、鬱になるのが関の山

・現状、ほとんどの仕事は新しく作り出すのでなく、今まであったものを守るだけ

 

・人は元々人の役に立ちたいと思っている

・人は放っておけば、たいてい“いいこと”をする(役に立つ、立たないは別にして)

・才能がなくても一生懸命やる…へたくそな歌手の中からジョンレノンが出てくる。変わり者の科学者からアインシュタインが出てくる…それでいいのでないか?壮大な無駄…その無駄に投資せよ。

 

<<< 以上 なぜ仕事がツライのか燃え尽き症候群生むシステム の文字起こし>>>

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