会社とは何か? その8  ⑦ 日本でJOB型雇用なんて成り立つのか?

 ⑦ 日本でJOB型雇用なんて成り立つのか?

以下、俺の懸念事項:

    SpecialistJob Descriptionなんて日本人になじむのだろうか?

Job Descriptionで責任の範囲を明記しようとすれば「Specialistの責任はマニュアル、業務フロー通りに業務遂行すれば果される」とせざるを得ない。つまり、責任を明確にしようとすれば「業務遂行中に何か問題、トラブルが生じた場合、Specialistはマニュアル、業務フロー通りに業務遂行していればそれ以上の責任は問われない」とするしかない。このように責任の範囲を決めた場合、その範囲を超えた責任はだれが負うのか?当然責任を負うのは経営者しかいない。こうなると経営者は全てのSpecialistの行う業務に精通していてそのマニュアル・業務フローなどを自ら定めるかまたは知悉し、特に業務上のリスクとリスク対処法について心得ておく必要がある…このようにSpecialistの責任範囲を超えた”無限責任“を受け入れる覚悟・能力のある経営者(Exempt)が日本にいるのか?育つのか?

従来日本では各部門で業務上発生した問題については、その部門(の担当者)は社内外の関係者が「これでいい」と言ってくれるまで(つまり問題解決するまで)全身全霊を尽くして解決に当たる責任があった。責任の限界などない。つまり、各部門(の担当者)の問題解決責任は無限責任。その結果生じる経営上の責任・リスクを負うのは経営者にしても…。Specialistは責任範囲を明らかにしてもらって嬉しいのか?確かに「ここまでやれば免責」と線を引いてもらえれば気楽だし勤務時間も短縮する。突然の残業・出張もなくなり育休も取りやすい。逆に社内外の関係者が「これでいい」と言うまでが責任となると、発生する問題や関係する人が違えばSpecialistの責任の持つ意味・範囲も大きく異なり、業務負荷・内容も会社や状況によって大きく異なることになってJob Descriptionになじまなくなる…同じ職種でも会社・職場・担当業務によって業務内容や責任や給料に大きな差が生じることになり、JOB型雇用は成り立たない。

一方で問題解決上の無限責任を果たすべく苦労すること、前例のないトラブルに巻き込まれ、寝食を忘れ、非定型でマニュアルもインストラクションもない仕事を成功裡に完遂すること(=修羅場を乗り越えること)は成長のチャンスでもある。これはスキルアップ、キャリアアップにとって得難いチャンスではないのか?

    設備装置の設計や操作マニュアルを作る時、Blue collarは替えのきく部品で、馬鹿なことをする未熟な素人だ、という前提でfoolproofな設計・マニュアルにすることができるのか?現場で問題が発生するのを防いだり、問題が発生したとき解決するのはBlue collarでなく、第一義的にはExemptまたはSpecialistの仕事・責任と割り切るのは日本人向きか?自分で問題解決するBlue collarが日本の現場の強みじゃなかったのか?それがfoolな経営者を助けてきたのではないか?それとも日本の企業は中途半端にSpecialistだけ導入してExempt Blue collarは導入しないのか?

ここで思い出されるのは約30年前に経験したアメリカの某大手化学会社のプラント設計思想。ある化学物質を作る途中の一番大切なプロセスで有毒物質が生成される。この有毒物質が生成される設備は、重要なものなので運転員が操作を間違えて壊しても大丈夫なように、2ライン作る。加えてドームで覆われていて、万が一の場合でも有害物質が外に出ないようになっている。俺は思わず「万が一の時、運転員がドームの中にいたら?」とアメリカの某化学会社から来ている人に聞いた。彼は黙って首に指を当て横に動かして首を切るしぐさ…。俺の(そして多分日本の)常識とはかけ離れている。俺の常識では運転員が間違えてライン全体を壊すという想定はしない。設備が壊れることの対策として重要な機器・部品を予備として持つという考え方はあるが、フルライン設備1式を予備とするという発想はない。その代り、プラントが壊れたら現場、メンテナンス担当者及び工事業者、装置メーカー、調達担当などが混然一体となって復旧・災害の拡散防止を目指す。実はこの「一日も早い復旧、拡散防止」を目指した緊急事態対応、例外業務は関係者の経験値を上げる効果がある。また、関係者相互の性格や技能を深く知るチャンスとなり、関係者の“ワンチーム感覚”を醸成する効果もある。(有限責任のSpecialistでは期待できない効果)そして何より「お前らは馬鹿だから事故ったら死ね」「お前らは馬鹿だから装置を壊す」という、Blue collar fool差別がなく、運転員・現場による改善が期待できる。ドームで覆われてなくても現場は日ごろから有害物質の流出のない運転ができるよう訓練し、もし事故があったら流出を最小にすべく頑張る。日本の製造業の経営者は設備の設計思想まで知悉し、立ち入って口を出すか?せいぜい「設備設計なんて分からないから専門家(Specialist)の皆さん、よろしく。極力、有害物質が外部に流出しないようにしてね」と言うくらいではないか?…これだけでは、有害物質流出防止責任は運転側にあるのか、設備設計側にあるのかが曖昧になる。

俺の知る限りでは日本の経営者は相変わらず会社を売ったり買ったりに血道を上げているように見えるが。日本人向きで新しい会社経営・組織・人材とはどんなものか?寡聞にして聞いたことがない。

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