会社とは何か? その7 ⑥ JOB型雇用
⑥ JOB型雇用
前述の大きな(重要な)仕事とは、旧来のやり方では扱えないような新規性のあるもの。(例えば1960年代の石油化学とか、1980年代の半導体とか、1990年代のITやグローバリゼーションとか2000年代のM&Aとか、先輩上司の経験が役に立たないので自分で苦労してやり方を編み出し、覚えるしかない仕事)そんな仕事はどんどん減っているのかもしれない。俺の世代は会社を変わらなくても会社自身が変わり、それに従って仕事も変わったのでそれに対応して行けば結果的に”キャリアアップ“というようなことになったのか?
今の”仕事“が、先輩上司たちが営々と築き上げてきた仕事の作法(ベスト・プラクティス?)をなぞることを意味するなら数年の内には転職したい、という考えは理解できる。その手の”仕事“をマニュアル通りこなすことを”スキル“と言い、スキルを積んだら転職してキャリアアップというのは当然と言えば当然だ。(俺も同じ仕事の繰り返しなら10年も続けたいとは思わない。俺は我慢強くないからせいぜい3年も同じことを繰り返したら飽きる。)
これは近年流行のJOB型雇用と整合する。ただし、JOB型雇用も成果主義同様、アメリカでやっているから日本でも…はつまらないことになること必定。俺の知っているアメリカの会社員の雇用はまず、被雇用者を3つに差別する。
1.寸暇を惜しんで働くExempt;残業代無しで24時間働くワーカホリック。将来経営者、トップを目指す。全体の1%。
2.Specialist;毎日9時-5時きっちり働く定型業務処理屋。Job
descriptionに基づく雇用契約(=JOB型雇用)。Job
descriptionとは仕事の内容、責任範囲を明記した文書。Specialistは”プロとしてのスキル“を売る。また、この職種ならこれくらいの給料、という“相場“がある。彼らは労働を食うための必要悪と考える。全体の19%。
3.Blue collar;単純労働者。自分の時間(自由)を切り売りする。日雇いに近い。給料も日給。全体の80%。
この3つの階層分けは明らかに差別。1,2,3の階層は一生固定。処遇の差も当然のこととして受け入れられる。(アメリカのある会社のSpecialistは自分より若いExemptを「彼は才能もあるしリスクを負う覚悟もできているから俺のボスなんだ」と。)Specialistにとっては会社は神様ではない。働くのは食うため。(必要悪)。金を貯めて1日でも早くリタイアしたいから1円でも高く自分を買ってくれる会社を探して転職する…”キャリアアップ“。Exemptは違っていて彼らにとって経営者・トップは1種の神様・夢。
雇用者(オーナー、株主)から見れば被雇用者は替えのきく部品。雇用側がそう考えるなら被雇用側は、Exempt;面白さ+やりがい+責任+収入のアップを求めて転職する。うまく当たれば巨額の収入を得られるが失敗するリスクもある。Specialist;責任+収入のアップを求めて転職するが、職種別に給料の相場があるのでその範囲内でしかアップしない。様々な会社の同じ職種のSpecialist同士が集まって、どこの会社はこんな仕事でこんな給料、という情報を交換する。
Blue collar;単純に給料がよければ転職する。
働くことを必要悪と考えない人、”替えのきく部品“になりたくない人は起業したり、個人事業主になったり。
20歳そこそこで階層の固定をするのは日本人に向いているのか?日本において社員は“替えのきく部品”なのか?近年の日本の(少なくとも先述のアンケートに答えた)新入社員はSpecialistになることを前提としているようだ。Specialistは会社員になるのではない。プロとして自分のスキルを売るのだ。(見方を変えれば雇用者にとって取り換え可能な部品になる)未経験の新入社員から経験を積んでプロとしてのスキルを身に着けていく。これが彼らのキャリアップであろう。プロとして様々な経験をすることも必要なのでいくつかの会社を経験する必要があるのかも知れない。
俺の世代においてはキャリアとは経営者選別のプロセスでもあった。新入社員は会社に入った時点では誰でも社長になれる可能性があり、10年20年かけて選別された。一方JOB型雇用のSpecialistでは出世してもせいぜいマネージャーまで。これが最近の日本の若者のお望みなのだろうか?一方で俺の世代の「出世競争」が幸せをもたらすのかどうか?社長になれるのは同期で一人いるかいないか…不幸の総量の方が幸福の総量より多いのかもしれない。そうなるとハナからNo.1になるチャンスを諦めてSpecialistになるべきか??
会社として社長・経営者はどうやって選ぶのか?も気になる。Specialistとは別にExemptの採用をするのか?それとも自前でなく別の会社のExemptまたは経営者を引き抜いてくる?よそから社長・経営者をスカウトしてくるなんて、アメリカの猿真似をして日本の会社のよさを捨てる所業ではないのか?いわんや外国人社長をや。
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