会社とは何か? その6  ⑤ 俺の行った人事・教育

 ⑤ 俺の行った人事・教育

さて、2002年から十数年間「部長」として俺が行った“人事・教育”は「“選別”と“機会を与えること”と“救済”」だった。俺は阿弥陀様のようにすべての人間を救おうなんて大それたことは考えないし、心も広くない。①まず、救う(育てるべき、育てるのに価する)者を選別した。最初に自分の後継者を選んだ。ついでにその次、またその次…と入社年次45年おきに4代先まで自分の後継を勝手に選んで決めた。②次に海外拠点を含む各地の事業所、出先の責任者(マネージャー)候補を選んだ。この、①と②の合計で全体の10%程度になった。これが救うべき(育てるべき、育てるのに価する)者である。③残り90%は直属の上司(マネージャー)に任せた。言い方を変えれば、この90%はその他大勢で俺にとって「自分で直接育てるべき相手ではなく、育てるのに価しない」者だった。ただし、直属のマネージャー任せにできない場合がある。例えばマネージャーと部下が揉めたり、そりが合わなかったりして(今でいうパワハラみたいなこともあった)マネ―ジャー自身では解決出来ない場合。また、部下が全社的に大問題となる不祥事に関係し、直属のマネージャーでなく本社の上位者が出て行かざるを得ない場合など。このような場合、俺は問題の部下の味方をして救おうとした。飛んで行ってマネージャーと合わない部下には「安心しろ。なるべく早くお前かマネージャーどちらかを異動させるから」などと言い、不祥事に関わった奴には「馬鹿野郎。ここには居づらいだろうから、なるべく早くお前を異動しようと思うけど、どこに行きたい?」と言った。幸い、不祥事の中心人物になる大馬鹿野郎はおらず、“主犯“に頼まれてやむなく…という格好。こういう”救済“も”教育“の一種だったと思う。(ちょっと「親分子分」的な関係になった。それも悪くなかった。その時俺が思ったのは、せっかくのキャリアを捨てて会社を辞めかねない奴を引き留めよう、ということだけ。コンプライアンスなんて口が裂けても言わなかった。数少ない尊敬する元上司に教えられたのだが、こういう場合、こちらから「会って話したい」と申し出て、その部下から「会いたくない」と言われても無理矢理会いに行くこと…確かにそうだった)

「南無阿弥陀仏」と俺に身を預けて助けを求める(と俺が勝手に思った)部下は何はさておき飛んで行って助けた、という自負はある。そう言えば、あるマネージャーの交代の時、新マネージャーと「そりが合わない」と分かっている部下にこっそり事前了解をもらいに行ったこともあった。

さて、①②の“選ばれた人材“には、ややこしいプロジェクト、海外プロジェクトを担当させたり、大きな仕事がありそうな事業所・出先に異動した。あとは放置というか、様子は見るのだが、知らんぷりを装う。そいつが困って七転八倒すれば最高。それを乗り越えれば「一皮むける」。面白い逸話…上記①の一人を海外プロジェクトに突っ込んだ。ある日そいつが半泣きで「英語ができないから日本に帰りたい」と。俺は自分の経験を踏まえ「日本語ができれば英語もできる」と考えていた。そいつの日本語の能力、コミュニケーション能力は優秀で「そのうち英語なんてできるようになるさ」と信じていた俺は、泣き言に一切耳を貸さず「逃げんなよ」と一言。そう、一皮むけるには修羅場に遭遇し、「なんで俺だけが…」と逃げたくなっても「俺が逃げたらこのプロジェクトはどうなる?」と最後の最後で責任感なのか、上司・所属部署に恥をかかせたくないという意地なのか、逃げないことが必須。(逃げないためには本人の精神力だけでなく体の健康や、家族の健康も必須。自分や家族の健康問題で一皮むける挑戦から脱落せざるを得なくなった者もいた。こうなると運も必要。健康で丈夫な配偶者を得ることも会社員には大切なこと。)そう言えば、英語ができなくて半泣きしたこの男、ちょうど昇進の時期だったが、昇進にはTOEIC500点だったか?)のハードルが。ところが、海外赴任している者、海外プロジェクトに参画している者はTOIEC試験免除という例外規定が…こいつはTOEIC受けたら昇格できなかったかも知れないところを免除になって見事昇格。その後、プロジェクトから逃げ出すこともなく、現地に陣中見舞いに行ったらすっかりなじんでいて「ここじゃあこういう作法なんですよ」なんて教えてもらった。驚いたり喜んだり。

そして人事。自分の後継以外の人事は俺自身のアイデア、権限で大体実現可能。自分の後継については自分ではコントロールできないので日ごろから機会をとらえて社長…人事部長その他に吹き込んでおく。聞かれればもちろん自分の考えを言う。退職を控えた俺にとってはこれが最大の懸案事項だった。これが成就して安心し“燃え尽きた”。

 

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