ウクライナ戦争:プレジデントオンラインより(佐藤優さん)

 ウクライナ戦争の原因、経緯に関する疑問が、プレジデントオンラインン記載の佐藤優さん、大前研一さん、清水克彦さんの記事で大体解消したように思う。

佐藤優さんの記事から抜粋:(特に日本の太平洋戦争における失敗とリンクさせるところが秀逸)

ウクライナ侵攻直後のAPI通信による世論調査ではウクライナ情勢についてアメリカ人の52%は「小さな役割を果たすべき」20%は「かかわるべきでない」という結果だった。トランプは、「俺ならプーチンのところに飛んでいって、ディールする、つまり正義とか何とかややこしいこと言わないで、一方であまり無茶するとアメリカも黙っちゃいねえぜと脅し、もう片一方でどうしたら矛を収めるのか聞いて交渉し、取引する」と言った。

バイデンの弱みは民主主義国が団結すれば全体主義に勝つと思っていること。そしてソ連崩壊後ロシアの人たちが大変な窮乏生活に耐えたことも忘れているようで、制裁すればロシアは音を上げると思っている。バイデン政権はアフガン撤退の時「タリバンなんて大したことない」と言ったが間違えていた。インテリジェンスに欠け、「アメリカの正義が勝つ」と信じている。そのうえ、早々にアメリカはウクライナに軍事介入しないと言ってしまったのでプーチンも安心してウクライナに侵攻した。

プーチンの狙いはウクライナに傀儡政権をつくることではない。ソ連時代時代から傀儡政権は作らず、むしろ「ソ連に逆らっても無駄だ」と諦めさせてソ連に逆らわない政権が現れるのを待つ。ウクライナに関しても侵攻してロシア軍が侵攻すれば、短期間でゼレンスキーに代わってロシアを受け入れざるを得ないという現実的な選択をする大統領が出てくるはず、と考えた。(実際、ゼレンスキー以前には親露派大統領がいた…ただし汚職して私腹を肥やすばかりだった)アメリカは弱腰だし、エネルギーをロシアに依存しているEUも大きな声で文句は言わない、と読んだ。

2014年クリミア半島を併合した後、ロシアはロシア本土とクリミアをつなぐ橋(クリミア大橋)を作った。これをウクライナは破壊したいのだが、アメリカはそれを許さない。NATOやアメリカが供与した武器でこの橋が攻撃されたらロシアは武器を供与したNATO,アメリカと戦争(=第三次世界大戦)を始める。それを回避する一方でロシアに勝たせるわけにもいかない。勝ち負けをはっきりさせない状態を維持するのがアメリカの考え。

ゼレンスキーは汚職にまみれた既存政治家や役人を使えないので素人のお友達を使っているが、その中でも出来の悪い二人を解任した。解任理由は「部下を統率できない」というものだが、「部下」は「コメディアン出身のゼレンスキー以下素人政権は長続きしないだろう」とか、「こんなバカ上司は嫌だ」と思ってロシアに情報漏洩する者も出る。二人の解任についてロシアのTVでは「戦争に勝てないウクライナ国民の不満から目をそらすための解任だ」と言う。ロシアは末端の官僚から腐ってロシアになびくのを待っている。ゼレンスキーはEU加盟を公言しているが、ウクライナの伝統である汚職の撲滅がEU加盟の必要条件。

国際政治学者の故・高坂正堯さんによれば国際関係は価値の体系、利益の体系、力の体系、3つの体系が複雑に絡み合って成り立っている。太平洋戦争は、力の体系から見れば、完全に無謀だった。利益の体系からすれば、日本に益があるのか、冷静な分析は行われなかった。ところが、価値の体系が肥大した。欧米の白色人種の支配からアジアを開放するという理念だけが肥大し、暴発に至った。価値の体系が肥大化しやすいのは、日本人の独特な思考法ではない。マリウポリのアゾフスタリ製鉄所に長く立てこもっていたウクライナのアゾフ連隊なども、それに近い。地下にこもって住民を巻き込んだところなど、沖縄戦によく似ている。ウクライナがロシアに勝てないのは、ウクライナのせいではなく、アメリカが本気で後押しをしないから。アメリカによる武器の逐次投入…戦力の逐次投入も日本軍と共通。

日本の世論の危うさは、この戦争を価値の体系だけで論じがちなこと。報道や一部の政治家や有識者の発言を見ても、価値の体系のインフレーションを感じる。すなわち、ロシアは絶対的な悪。ウクライナは完全なる善。太平洋戦争の時と同じ危うさ。

利益の体系から見ると、立場が異なる。G7諸国で、ロシアの民間機に領空を解放しているのは日本だけ。石油と天然ガスの採掘プロジェクト「サハリン1」と「サハリン2」からも撤退していない。入漁料を払ってロシアの領海でサケ、マス漁をする仕組みも、従来通り維持している。全世界の主要企業役1300のうち、22%に当たる300社がロシアから撤退が日本企業で撤退したのは3~5%。アメリカ追随ばかりではない日本独自の路線は評価すべき。


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