「サクサク」「便利」「快適」「あがる」「映える」は自由からの逃避

 8月に入って北九州・小倉と東京・渋谷で母娘が刺されるという事件が連続して発生。北九州の犯人は東京に住む17歳の少年で母娘を刺した後、鉄道に飛び込み自殺。渋谷の犯人は15歳中三の少女で捕まった当初死刑になりたかったと伝わり、その後、塾に行きたくなかったとか、母親や弟を殺す練習だったとか様々な情報が断片的に。

北九州の事件は理解できる。娘に連絡を絶たれた17歳男が位置情報共有アプリで娘の住居を洗い出して刺しに行き、その後自殺。犯人はストーカーと言えばストーカーなのだろうが、思い詰めて娘を殺し、自殺して果てるところは共感できる。

位置情報共有アプリで一番有名なのはZenlyというやつらしい。名前からしててっきり「ゼンリン」という日本の(北九州発祥の!)地図の会社が開発したものだと思っていたら、フランスで開発されたんだって。日本では女子高生の間で流行ったのが始まりだそうだ。とても興味深いのは「自由」との関係だ。友達と会うのにいちいちアポしなくてもその時近くに誰かがいると分かればその人と会うなんてことができる。この使い方は自由をより自由にするものと言える。一方で上述の北九州事件の通り、相手の自由を奪う(自分の自由を奪われる)ツールにもなる。

こういう「年寄の常識」なんて関係なく若い娘が簡単・無防備に位置情報共有アプリをどこの馬の骨とも知れない男、会ったこともない男と共有するところは、北九州事件で分からないと言えば分からない点だが、位置情報共有アプリに限らず、若い娘が見知らぬ男とSNSで仲良くなって会いに行ったら…などという事件は後を絶たない。

俺は夫婦だって家族だって秘密・プライバシーはあるべきと思うからこんなアプリは嫌だし気味が悪い。自由の反対の束縛・監視のツールだ。女子高生の中には親友と「24時間つながっていたい」人がいて、SNSで常時、何をしてるのか知らせ合う。これも自由から束縛への逃避か。片一方が嫌になったり何かの都合で既読にならなかったり既読スルーになった途端、正しく束縛のツールになる。

(以上、NHKのドキュメント72時間「プリントシール機 彼女たちの春」を参考。)

大上段に構えれば「自由は命より大切」か?それとも「命が何より大切」か?俺は自由の方が命より大切だと思う。平和憲法は「一人の命は地球より重い」だ。これが安倍元首相も壊そうとした「戦後レジーム」であり、江藤淳さんの言った「ごっこ」である…命や平和を守る為なら不自由もごまかしもOK。日本は平和憲法なので国防という汚れ仕事はアメリカ様にやっていただく…改憲問題は、自衛隊を憲法に明記するなどといった小手先の次元でなく「自由と命どっち取る?」といったところから議論をすべきなのだが…今の日本人には無理かなあ…?

位置情報共有アプリを使い「24時間つながっていたい」人は「自由と命」なんてダサくて小難しいことには関係ない。「サクサク」、「便利」、「快適」、「あがる」、「映える」ことに興味がある…そういう若者に責任はない。何十年間も他国から侵攻されることもなく、「自由と命」などということを考えたり語ったりする必要がなかった幸福が禍・仇(わざわい・あだ)となった。よく戦争の悲惨さを語り継ぐとか風化させてはならないなどときれいごとを聞くが俺に言わせれば1945年の本土空襲、沖縄戦、降伏から1952年の占領終了までに何が起こったのかについても風化させないよう語り継ぐ必要がある。(特にアメリカの残忍さ、ずるがしこさ、民主主義から反共にブレる節操のなさ、そして天皇を生き残らせ日本人を腑抜けにしたそのやり方、更には腑抜けにされ厭戦気分から平和憲法をありがたく押し戴き、命を長らえるために喜んでアメリカにしっぽを振った日本人…)

さて、渋谷事件。上さんから言われて気が付いたがどうして犯人はおとなしく自殺しなかったのか?せめて母娘を刺した後、一人で自殺して欲しかった。自殺の練習はしたのか?多分してない。自殺は怖かったのか?“勇気”が湧かなかったのか?自分を殺す練習はせず家族を殺す練習はする。この犯人は自分の命も他人の命も等しく軽く扱っている…夏休みの自由研究よろしく「どうしたら人間は死ぬか?」試した…そして死刑になる自由、塾に行かない自由、他人を殺す自由、その練習をする自由を試した。

①死刑になる自由:刑罰には2つの意味・存在理由がある。一、罪の償い(悪いことをしたらお尻をペンペンされる)。二、再発防止(マネする奴が出ないようにする)。渋谷事件に限らず、「死刑になって殺されたいから」人を殺めるという犯罪が何件も起きる。これは生きる意欲・希望を失った人間・絶望した人間には死刑が自殺より簡単・確実・手っ取り早くて魅力的(=「サクサク」「便利」「快適」「あがる」「映える」)に見えることがある、ということ。これにたいする対処は、上さんの受け売りだが、死刑にせず、いつまでもグダグダ無為に生き続けさせること…死刑になる自由を奪い、自殺しなかったことを後悔させること。この点、日本のグダグダ無為に時間をかける裁判は有効。

②塾に行かない自由:この自由は問題ない。行きたくなけりゃあ行かなければいい。ただし、渋谷事件の場合、塾に行かなければならいいというプレッシャーの方が他人を殺める罪より大きくなる、という甚(はなは)だ不自由なことになった。

③他人を殺す自由:他人を殺すことは他人の自由を奪うこと。自分の自由と他人の自由を秤にかけてどちらが重いのか?自分の自由の方が重いと言うのは恥ずかしい。同じ重さと言うと答えになってない、他人の自由の方が重いと言えば格好いい。見栄で他人の自由の方が重いとするか?いざとなったら自分の自由の方が大切か?他人の自由を取るか自分の自由を取るか???渋谷事件の犯人は死刑でなくても簡単・確実・手っ取り早く死ねれば他人に殺されてもよかったのではないか?殺されたいと思っているこの犯人にとっては自分の命も他人の命も同じように軽かったのだろう。死のうと思っている人間の中に例外的に自殺より殺されることを選ぶ人がいる。

アメリカなら銃の乱射事件が起きるところが日本では刃物での殺人(未遂)で終わっている、ということか。アメリカでも銃(=自分の自由のために他人の自由を奪う武器)の規制が国を二分する問題となっている。アメリカの保守派はイギリスと戦って勝ち得た独立にアメリカ史上最高の価値を置き、自分(自国)の自由が最も重くそれを勝ち取るには武器が必要とし、一方、リベラル派は自分の自由と他人の自由の重さは同じで、銃も規制すべきと言っている。保守派は切れ味・威勢はいいが、危なっかしい。リベラル派は格好はいいが、国を守れるか?と考えると心もとない。

死刑その他、他人を殺す事は他人の自由を奪うこと。キリスト教徒にとっては最後の審判で神様から地獄行きを命ぜられることが最大の不自由(=束縛=罰)だろうが、キリスト教徒でなく「死んだらおしまい」と考える俺にとっては殺されることが最大の不自由であり、束縛。命を奪われるという最大の不自由を避けるために自分の命をかけて戦うべき。女子高生に代表される日本の若者には自由や命よりも「サクサク」「便利」「快適」「あがる」「映える」方が大事なのだろう。不自由・束縛も知らないし気にしない。無防備。目の前で死ぬ人を見ることもなく自分の命も他人の命も同じように軽い。平和ボケ。

いずれにしても、戸田市の教育委員会がのこのこ出てきて謝罪記者会見をする筋合いはないし、その様子を取り上げるメディアもおかしい。「自由と命」なんて問題は教育委員会の手におえる問題でもないし、教育委員会に扱わせるべき問題でもない。自分の頭で考え、自分の言葉で語る人に扱わせるべき。(そんな人がいないからこんな事件が起きるんだけど…ないものねだり)

アメリカもウクライナもロシアも中国も安倍元首相も自国を守るために他国と戦う自由を主張する。日本の若者の一部は自分が殺される自由のために他人を殺そうとする。他方、命・平和至上で自国の自由を守ろうとすることすら「戦争」と呼んで嫌い、考えようともしない若者もいる。自分の自由だろうが他人の自由だろうが守ったりそれについて考える必要がない…自由があふれかえり、自由を持て余して自由から束縛へ逃げようとしているのでないか?「サクサク」「便利」「快適」「あがる」「映える」のSNSは時間をかけて考えない人を爆発的に増やすが、束縛への逃避に通じていないか?いわゆるDXはそれを運用する一部の人による支配・束縛をもたらさないか?90年前のドイツ、イタリア、日本は貧しさのゆえに自由から束縛に逃げ、破滅した。ロシア、中国も自由から逃げてきたが、そろそろ危ない時期か?

閑話休題>>>

ロシアのウクライナ戦争はロシアにとって財政負担大…仮にロシアが勝っても、大した見返りはなさそう。財政的には戦争の前と比べてロシアにとってマイナスの方が大きいのではないか。それがロシア国民に広く認識された後、クーデター或いは暗殺でプーチンがひっくり返るかも。

中国のゼロコロナも財政的にはマイナス大。トランプの徴発もあり、習近平の意地、面子でゼロコロナと言ってはみたものの、コスト的にはメリッットよりデメリット大きく、評判も悪い。経済成長が止まりそうだとなればそれまでおとなしかった百姓が騒ぎ出す。それに乗じる輩が出てくるか?俺は百姓の声・動きが中国の政権を左右すると考える。中国では監視がきついがそれは百姓を恐れていることの裏返し。監視をきつくしているが故に百姓の声・動きは手に取るように分かり、そのひどさ、過激さに習近平が政権を投げ出すなんて…

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