司法取引と日本人の恥の意識

 リニーエンシー、内部通報、司法取引。大雑把に言ってアメリカ、もう少し幅広く言えばプロテスタント、あるいはカソリックの信者が多い国の仕組みを日本に導入したもの。日本人に向いているのか、日本に根付くのかなんて無関係に役人や政治家たちがアメリカに対するお追従・忖度で自ら進んで「アメリカの物まね」をしたがる。俺が会社人生を始めた昭和の御代はこんなことは無縁だった。それがアメリカから強要されたこともあるが、バブル崩壊後の日本を変える方策、あるいはグローバリゼーションの一環として入れられ、アメリカの狙い通り、日本の企業の効率を落とし、力を弱めることに成功した…いいとこどりしてアメリカの物まねができる中国がうらやましい。

俺のアメリカ経験から言わせてもらえば、これらは宗教的背景(国民性)から考えて日本には全く不向き。アメリカでは裁判などで「神に誓う」のは大変なこと。だって、神様を信じてるから。(もちろん信じてない奴もいるけど、少なくとも20世紀までは信じてる奴が多かったから、神に誓えば嘘はつかない奴が多かった、と思う。)アメリカの司法、行政は「①神ならぬ人間には原罪*があるので全員必ず悪いことをする②人は神様に誓えば嘘の証言はしないし、罪を認めないと神様の心証が悪くなると信じている。」という建前を前提としている。対して日本人は①性善説②仲間に迷惑かけないこと或いは自分が得することが最優先で裁判でも嘘をつくし、罪を認めないことがある。(全知全能の神という「たが」がない)

リニーエンシー・司法取引:

 一緒に悪いことをした仲間を裏切って告げ口すると、告げ口した奴だけ罪が軽くなる。

内部通報:

 悪事を働いている他人のことを告げ口する…建前上、告げ口した者に見返りはないが、組織全体が同じ悪さを繰り返さないようになる…本音では告げ口する者は、告げ口される者を貶めたいと思っていることが多い。

こんなことは、かつての日本人には「恥」とされたこと。「告げ口してはいけません」なんて言われた。日本の司法・行政の前提は「原則、人間は悪いことなんてしない。ただし、司法・行政の言うことを理解するほど頭は良くない。法律とは別に善悪の判断基準があり、悪いことをしたことが露見すれば自ら恥じる。」コロナの助成金詐欺なんて面白い。悪い奴から見れば抜け道だらけの助成金申請システム(まじめに申請しようとする者にとっては面倒でやってられないシステム)を作っておいて、案の定、悪さをする奴が出てくると一罰百戒、事案を公表して「自分から『悪さした』と役所に言って来い」だって。もしかすると、詐欺の金額より、申請できずに受け取られなかった助成金額の方が多いかも。

アメリカのカソリック・プロテスタントの信者にとっては、自ら恥じるなんてことはあり得ないんでしょう。(判断基準は神様だけ)性悪説どころか、100%どんな人間でも必ず悪さするので悪さできないような関門を作りチェックをしておいて、それでもそれをかいくぐる確信犯は自分から言って来ることはないから周囲に告げ口させて動かぬ証拠をつきつけて罪を認めさせよう、ということ。

日米とも司法・行政は国民性の変化についていけていないように思う。

日本はまず第一に司法・行政のコミュニケーション能力が問題。国民に何をして欲しいのか、何をしてはいけないのかを文書で100%伝えるよう努力が必要。(司法・行政の人たちにそれができる能力があるかどうか怪しいが)次に性善説をどうするのか?一人一人の恥の意識・道徳にどのくらい依存するのか?その匙加減が難しい。

アメリカでは国は認めてないが、実際にはさまざまな機関・組織が神様の代わりに監視盗聴ハッキングしてる。これをもっとオープンにして「お前らのやってることは常に見られてるんだぞう」と言い、時々摘発して一罰百戒効果を狙ったらどうか?…アメリカ人の大好きな自由平等の建前に触るか?

*原罪意識が希薄な国民は、「現人神」を作りやすい?…現人神=権威主義・反民主主義?「人間は不完全で必ず間違える」という前提を置くなら、国のトップは定期的に交代すべき。一方で間違いをしない独裁者による政治が一番効率的だとは思う…そんなのがいないから民主主義なんていう面倒なものしかない…ちなみにキリスト教でもロシア正教は原罪意識は希薄で、「間違いをしない人」がいる、ということらしい。

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