三菱電機の株を買おうとしている
数年前、¥2000を超えていた三菱電機の株価がISO違反が露見して大いに下がった。直近は¥1400を境に上がったり下がったり。¥1350円で指値して購入を試みているが、残念ながらそこまで落ちないので買えないでいる。(本当は配当がいいから株を買うのであって¥1400超で買っても全然OKなのだが、ついついケチケチ根性を出す)
さて、俺はISOなんて全く信用していない。物づくりにおいて成熟した会社では、物づくりの実力にはISOなぞ全く無関係。そして、数年前から次から次へと芋づる式にISO違反が露見する三菱電機という会社の体質を、俺はどちらかというと好感している。製造会社及びその子会社の社員だった俺に言わせれば、ISO違反なんて社員の内部告発以外に露見する理由がない。内部通報や内部告発が頻発する会社はよく言えば「風通し」がギリギリいい会社。(もっと風通しがよければ内部告発に至る前に違反行為をやめていただろうが)。でも社員が諦めていたら内部告発すらしないし、根っこから腐っている会社なら内部告発が握り潰される。二、三十年前にお菓子の不二家で、床に落ちたケーキを3秒ルールよろしく拾い上げて売っていたという不祥事が露見し、結局、山崎パンに身売りする、という事件があったが、俺は「ケーキを床に落としても、それを喰って腹を壊す人を一人として出さない」不二家の品質管理技術に感心した。ISOもしかり、ISOの規定を馬鹿みたいに金科玉条、守るだけが能じゃない。結局はお客さんに迷惑をかけないのが目的。三菱電機の製品を使っている客で品質トラブルを起こした客があるのか?寡聞にして知らない。(嘘つきの三菱電機のものを使っているという事実によって信用を失った会社はあるだろうが)
ということで、俺はISO違反はすれども品質トラブルは起こさないという三菱電機の品質管理の実力を高く買う。しかし、このご時世、実力とは関係なく、不祥事が会社を潰すという可能性はゼロではない。ここで連想されるのは今や空中分解しつつある東芝が、数年前に起こした不祥事。あれは、いずれは発覚する売上・利益のその場しのぎのごまかし。会社が腐っていた、あるいは追い詰められていた、ということでしょう。三菱電機の場合、客に言われて仕方なく、なのか、自分から言い出したことなのか分からないが、意味のない過剰な仕様や品質管理の約束をし、意味がない・過剰だからと、客に迷惑が掛からない範囲内でごまかすことのできる実力がある…悪くないと思う。内部告発のマイブームが一段落すれば落ち着く、と思いましょう。そう言えば東芝と三菱電機の重電部門を切り出して合併させたTMEICという会社。どうなったろうね?かつてはご立派だった両親会社がいずれも不祥事。まだ社長はたすき掛けで順番に出しているのかしら?三菱電機は、客の細かい要求仕様にいちいち応え、東芝は自分の標準仕様を客に押付けていた、のではなかったか。三菱電機は製造コストは高くなるが、客にかわいがられて競争を回避しようという戦略。これはこれでいいように思うが。中には意味のない過剰な仕様を押し付ける客がいて、三菱電機はそれに準じるような顔をして裏では「意味がねえや」と判断すれば無視していたということでしょう。ISOなんてのはこのような判断能力・実力がなく、杓子定規に取り決めて書き物にした通りに作らないと、まともに物づくりできない人・会社のためのもの。
1990年代、俺のいた会社でもISOが流行り出した。いわく「ISOがないと客(とりわけ海外顧客が)相手にしてくれない」と。ISOにしても5S,TPMにしても「やる」となると必ずお先棒を担ぐ奴が現れた。皆同じパターンで、ISO、5S、TPM…を自己目的化する。それに逆らったり、バカバカしいとシラケたりすることができない「空気」を醸し出す。ISO、5S、TPM…を神様にして神棚に上げて、拝むことを強制させられる、とでも言ったらいいか?*こうして日本の企業はISO、5S、TPM…の本来の目的を忘れ、神様を拝む真似だけし、競争力を失った。これにとどめを刺したのが会社法で「会社は株主のためにある」という法律に会社が支配されることになった。これで会社が何のためにあるのか分からなくなってしまい、経営者は株価だけで評価されるという勘違いが横行し、短期間で成果を上げようとM&Aに走った。
会社は日本においては「人たちが安心して食べることができる場所=神様のやしろ=社」のもとに「人々が集まる=会する」 もの。つまり、「寄らば大樹の陰」の大樹であった。つまり、頼りにして集まる人たちの物であって、株主のものではない。会社法はアメリカ人の陰謀、指金だが、日本の会社の息の根を止めるのに大いに役立った。
*TPMについて、いみじくも「新興宗教だ」と断じた人がいた。俺が所属していた工場でTPMを始めることになり、すでに導入して「成果を上げていた」先輩工場の知り合いに話を聞きに行った際、そう聞かされた。課長だった俺はこう聞かされた時点で「なるべく部下の仕事を邪魔しないようにしよう(自分だけがやってるふりをしてごまかそう)」と思った。
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