ルパン三世PART5 EpisodeⅣ に泣く

アニメ・ルパン三世はもともと好きだった(峰不二子とのバカバカしいやりとり、しゃれた大野雄二さんの音楽)。しかし、これを見て泣くとは思わなかった。

EpisodeⅣはPART5第21話~24話として2018年8月~9月にかけて日テレ系で放送された。俺は2022年にMXで再放送を見た。ちなみに2019年4月に原作者のモンキーパンチ氏が死んでいる。脚本は大河内一楼。

さて、登場人物(ルパン、銭形、不二子、五ェ門、次元といったおなじみのメンバーは除く)

アミエナン:天才少女ハッカー。母親は日本人で名前は「網」に由来。6歳の時キッズポルノ業者に誘拐されたが、才能を認められハッカーに。母親は死んだ。父親はエンゾブロン。ルパンを助けて仮想通貨を盗んだのが縁となり、段々ルパンに好意を抱くように…峰不二子の恋敵。

エンゾブロン:巨大IT企業「SHAKEHANZ」社の創設者。AIの解析で膨大なデータからあらゆる人間に関する情報を割り出す革命的SNS「ヒトログ」を発明。

あらすじ:

「ヒトログ」で個人を指定するとネットに公開されている個人情報が一瞬のうちに集められ、犯行の手口、変装の癖や逃走パターンまで解析されて、次に何をするのか予想できる。
まず、峰不二子がヒトログで追いつめられ、SHAKEHANZの本社で捕まってしまう。次に世界的に有名なルパンが標的とされ、世界中でルパンを憎む者達を間接的に扇動して追い込んでいき、遂には仲間の五ェ門や次元までも彼らをルパンがどう思っているのかFakeを取り交ぜた情報で疑心暗鬼にさせて巧みに誘導。不二子を助けにSHAKEHANDZ本社に乗り込んだルパンだったが五ェ門と勝負する羽目になり、斬られて逮捕される。これでヒトログの情報の信頼性は絶対的なものとなった。その後、次元の助けで脱走したルパン達が世界各国の機密情報をヒトログで公開しそれをヒトログがA判定(=正しい可能性が高いと判定)してしまう。その結果、各国の政府や会社の不正が暴露されたことになり大混乱が起こって、「ヒトログ」は世界中の国家からテロリスト同様に敵視される。それでもエンゾブロンは「真実が暴かれれば世界は理想に一歩近づく」とひるまないので各国から攻撃され、最終的にヒトログ・SHAKEHANZ本社ともども破壊される。各国の攻撃の真っ最中にルパン・五ェ門・次元はSHAKEHANDZ本社に潜入し牢屋に入れられた不二子を助け出す。エンゾブロンはアミを助け、アミの名の由来を教えたり、かつての妻のことを話すなど、アミと再会した直後には失っていたかに見えた父親としての人格を取り戻す。すさんでいたアミ親子の心はルパンの人間臭い行動や「機械には予測できない」熱い心によって人間らしさを取り戻す。不二子を牢屋から救い出す前にルパンは「素顔」「正体」を不二子に見せるが、それは何だったのか?ルパンは何ものだったのか?銭形、不二子、アミ、エンゾブロン、五ェ門や次元…ルパンと命をかけた戦いをし、ルパンを知った者たちは皆ルパンに惚れてしまい、瑞々しい自然な心を取り戻し、生き生きとする。ルパンを表すアミの名台詞:隣にいて欲しいけど近すぎると落ち着かない、自分のものになって欲しいけど独り占めできたらきっとがっかりする、彼の全てを知りたいけど謎めいていて欲しい…Sometimes I hate you because I love you...
「選挙ごとに組織が変わる国(=民主主義)なんてものが信用できるか?」というセリフもいい。最後の五ェ門のセリフ「だが、悪くない」…そんな未来が待ってるかもな?なんて希望をもたせてくれるエンディング。泣かせる。

本作に出てくる「ヒトログ」の機能は”140字の戦争”に登場した、2014年に起きたマレーシア航空機撃墜事件はロシア製のブークミサイルによって行われた、と突き止めたtentative & voluntaryなチーム(bellingcat*)の機能と全く同じ。脚本の大河内さんは一体何から思いついたのか?ちなみに”140字の戦争”の原作が発表されたのが2017年、日本語の翻訳版が出たのが2019年。本作の脚本が書かれたのが2017年か2018年。大河内さんの想像力は素晴らしい。そして「ヒトログ」に人間臭くあきらめずに挑戦するルパンも素晴らしい。五ェ門や次元は「もうついていけねえ」とか「面倒な世の中になったもんだ」と俺と同じセリフを吐いて逃げ腰。「ヒトログ」は法律や司法に代わって不正を働く政府や会社を露わにし、政治家のように人々を扇動した。秘密が守れなくなるので知的財産という概念も意味をなさなくなるだろう。「透明で秘密がない」ことは破壊的だ。

bellingcatみたいな「いいね」が取り持つ縁でできたチームのことを何と形容すればよいのか?spontaneoous, tentative, voluntary…強制されていない、恒久的でなく用が終わったら解散する、報酬目当てでない好き者同士、そういうチーム。これが衣食住、エネルギー、安全の確保・生産といった国家・会社の機能を100%代替できるとは思えないが、国家・会社の効率を上げたり不正や不正義を暴くことはできるか?ただし、不正者の猛烈で大量なfakeニュースに邪魔されるだろう。bellingcatの機能を「ヒトログ」のようにAIにやらせる…そのうち、AIが過去の実績から政策にしろ、戦争にしろ、人間に代わって決定する?それこそついていけねえ世界だ。ルパンのようにAIを自分のしたいことに利用できるか?それともAI様に操られるか?五ェ門の言う通り「だが、悪くない」…となるよう祈る。

*bellingcat:猫に鈴をつける

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