金継ぎ

割れた陶磁器を漆で接着して修復し、漆の上に金粉をつける・・・金継ぎという技術が日本には古くからある。思い出の詰まった陶磁器割が割れてしまってもこの金継ぎで蘇る。もちろん、全く同じように元には戻らない。紛失してしまった部分は漆+金粉で埋めるし、割れた跡には金色の線が入ってしまう。それでもフォルムは復元し、それを見て喜ぶ人がたくさんいる。

父親の新婚旅行の記念の茶碗が割れてしまい、それを知った娘が親に黙って金継ぎで茶碗を直してもらう。父親は喜ぶ。なんとなくしっくりいっていなかった父娘の間柄がよくなるきっかけになるかも知れない・・・

結婚祝いに父親から水差しを送ってもらうが、数年後、子供がそれを割ってしまい、父親は亡くなってしまう・・・それを金継ぎで直すと亡くなった父親の思い出が蘇る。

あるTV番組で、爆笑問題の太田が尊敬する向田邦子からもらった茶碗が割れて金継ぎで修復してもらって大変喜ぶというくだりがあった。

 こんな技術は過去の思い出を宝あるいは神と考え大事にする日本にしかないのではないか?死んだ人の骨に対する思い入れも日本人独特だ、と山本七平さんは書いた。古跡調査で骨を運ぶ作業をすると、日本人だけが気持ち悪くなると。日本人は骨の持ち主が生きていた時の遺恨なり恨みが骨に残ると信じるから・・・ユダヤ人なんか、「骨は骨」と割り切るらしい・・・骨にしろ、陶磁器にしろ、過去の思い出や遺恨が残っている・・・金継ぎの技術が日本だけで発達した、と考える所以だ。



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