映像の世紀プレミアム 第9集「独裁者 3人の”狂気”」 より
たまたま、NHKで 映像の世紀プレミアム 第9集「独裁者 3人の”狂気”」 を見た。非常に面白かったので以下。下線部俺のコメント。人間て、歴史に学ぶというか、進歩しないで何十年も前と同じ事を繰り返すもの。恒産無くして恒心なし。恒産無くして民主主義もない。
ムッソリーニは強い男による独裁によって強いローマ帝国を復活することを標榜し、民主主義に絶望したイタリア国民に熱烈に支持された。ハリウッドでもムッソリーニをたたえる映画が作られ、チャーチルも一時ムッソリーニを無力な議会政治を変えると賞賛した。
民主主義に必要なコストを賄うための搾取の仕組み、錬金術がないイタリア、ドイツ、ソ連、日本は独裁政治・全体主義に走った。(日本でも明治維新を懐かしんで昭和維新などと言った)
スターリンはレーニンの死後、後継の本命だったトロツキーを失脚させ、暗殺した。スターリンはウクライナを「ソ連の一部」と言い、ウクライナの穀物で外貨を稼いでソ連を工業化しようとした。1932年ウクライナでは不作で小麦が不足したが農民の食べる小麦も徴発して輸出し、300万人の農民が餓死した。これを見たスターリンの妻は自殺した。娘のスベトラーナによると妻の自殺はスターリンに対する裏切りであり、これ以降スターリンは誰も信じなくなり、権力闘争・粛清が激しくなり恐怖政治が始まった…後年、毛沢東はこれを真似た…大躍進政策、文化大革命。
ヒトラーはオーストリア国民はドイツ系民族だ、という理由でオーストリアを併合し、次にチェコスロバキアに対して、ドイツ系住民の多く暮らすズデーテン地方をドイツによこせ、と要求した…プーチンと同じ
ドイツをソ連に対する防波堤としたかった英仏は妥協してズデーテン地方のドイツ併合を認めた…さて、国際社会は2014年のプーチンのクリミア併合は認めたが、2022年は?いずれにしても、国際社会はウクライナを、どんなことをしても守らなければならない仲間とは見ていない。かといってプーチンにやりたい放題やらせてもいけない、と考えているようだ。
反共だったヒトラーはソ連を油断させ、だまし討ちするつもりで、一方、スターリンはヒトラーと手を組むことによって英仏をけん制しようという意図で、1939年独ソ不可侵条約が締結された。ヒトラーは1941年6月、これを反故にしてソ連に侵攻した。ウクライナではドイツ軍をソ連からの解放者として歓迎した。相手を騙すために嘘の契約、約束をするのはゲルマン民族でもキリスト教徒でもない。スターリンはヒトラーに騙されたと知ったとき、茫然自失したと言う…1941年4月25日、日ソ中立条約が結ばれる。1945年8月には今度はスターリンが、これを一方的に反故にし、日本が茫然自失となる。(日本人の学習能力のなさ?)
独ソ開戦直後、ソ連兵は士気が低く、負け続け投降した。スターリンは投降を厳しく禁じ、息子のヤコフが捕虜となるとヤコフの妻を収容所に入れ見せしめとした。また「特別阻止部隊」(逃げようとする味方の歩兵を後ろから撃ち殺す)を派遣した。ソ連と戦ったドイツ兵は「ソ連兵は恐怖と憎悪で自暴自棄になって戦ってくる」と言った。ソ連軍は盛り返し、劣勢となったドイツ軍のパウルス元帥は降伏した。ヒトラーも降伏を許さなかった。パウルスの身柄をドイツに引き取って死刑にしようとしたヒトラーは、スターリンの息子のヤコフとパウルスの身柄の交換を申し出たがスターリンはこれを拒否。ヤコフは捕虜収容所で自殺した…ここでヒトラーに負けなかったのがスターリン最大の成功体験。スターリンは以後この成功体験に頼って進むしかなかった。この独ソ戦勝利がソ連の最大にして(唯一の)戦勝…プーチンが敵対する国を無暗にナチと呼びナチをやっつけろ、と言うのもこんな戦い方でもなんとかナチに勝った独ソ戦しか誇れる勝利がないから。
スターリンは独ソ戦勝利の宣伝・アピールのためにドイツ人捕虜をモスクワで行進させた。その時、行進を見ていた一人のお婆さんが一切れのパンをドイツ兵に上げ、十字を切った。
1943年ムッソリーニは失脚、イタリアは降伏した。ヒトラーは捕まっていたムッソリーニを助け出し、ミラノでファシスト党を再建させようとしたが、ミラノ市民はムッソリーニを捕まえて殺した。
敗戦が近づくと、ヒトラーは60歳までの一般市民を徴兵した。(60歳超えの老人は役に立たないか?)ベルリン陥落直前にヒトラーは自殺した。遺体を跡形もなく燃やせ、というのがヒトラー最後の命令だった。スターリンは、結果的にヒトラーがドイツ国民に殺されなかったことを、ヒトラーの指導力のたまものであると賞賛した。…自分もいつ殺されてもおかしくないと思っていた、ということの裏返し。
1949年12月スターリン生誕70年記念式典が行われ、招待された毛沢東は「万歳」を叫んだ。スターリンは共産主義国の指導者達の憧れだった。1953年スターリンは74歳で死んだ。(暗殺説もある)1967年娘のスベトラーナはアメリカに亡命した…指導者の娘が敵国に逃げるようなソ連でも、崩壊するまでにはそれから20年以上を要した。
プーチンはスターリン時代をgreat Russiaと考えている…トランプはアイゼンハワー大統領の1950年代をgreat Americaと考えているのでないか?両者とも第二次世界大戦及び冷戦のヒーロー。米ソとも冷戦時代を懐かしむノスタルジーがあるのか?(日本人の高度成長期に対するノスタルジーと似ている?)アイゼンハワーは、共和党、民主党両党から大統領選に立候補してくれと頼まれた。素晴らしいと言うべきか?
スターリンは毛沢東、金日成、プーチンなど、共産国の指導者のアイドルで皆真似した。ヒトラーが独ソ不可侵条約を破って侵攻し不意打ちを食らわせてもソ連は負けなかった。それを見て、米英がソ連よりまずヒトラーをやっつけることを優先したことが幸運な変換点だった。おかげでスターリンは米英の味方になり、ソ連は戦勝国の仲間入りができた。(その点ではスターリンはソ連の救世主だった)プーチンにはヒトラーに相当するような別の悪役がいない。そして過去のスターリンの幻影、great Russiaを追っている。ソ連崩壊後、市場経済の導入に失敗し、貧富の差が広まってソ連時代の方がまだましだったと思っているロシア国民には過去の栄光にすがるしかないのか???
ヒトラーもムッソリーニも死んだとき愛人が一緒だった。愛人に見捨てられなかったのは不思議。ヒトラーは自殺し遺体を跡形もなく焼かせ、ムッソリーニは市民に殺された。
ヒトラーはスターリンを騙すために条約を結ぶ、殺される前に自殺する…反キリスト教的。(勝つためには人を騙す、運が尽きたと思えば自殺するのは中国的と言ってもよい)ユダヤ教、旧約聖書は認めなかったヒトラー。キリスト教は認めるがユダヤ教はダメ、と言ってもキリスト教ってユダヤ教から出てきたもの。無理がある。ヒトラーはそんなことも分からなかったのか?それともキリスト教を知らなかったのか?…分からない。”狂気”と呼ぶしかないのか?キリスト教徒にとっては本当に理解不能な”悪魔”なのだろう。ヒトラーに比べればスターリンやムッソリーニはキリスト教徒に理解できる範疇のワルだった。
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