嗚呼、エントリーシート!

AERA DIGITALに

ロート製薬はなぜ「エントリーシート廃止」に踏み切ったのか 採用担当者が感じた生成AIの「それらしい回答」と効率化への疑問

と題する記事:

ロート製薬人事総務部(採用担当)の藤原結衣さんの泣かせるセリフ。

一緒に汗をかいて未来をつくる職場の仲間を見つける採用プロセスの中で、ひたすら『効率化』を追求することがベストな選択なのか

「私たちは『正解』や事業への過度な共感を求めているのではありません。限られた文字数の中で知りたいのはエントリーしてくださった『あなた自身のこと』であり、求めているのはこれまでの事業を土台にロート製薬にはまだ存在していない新しい事業や商品の作り手になっていただく可能性のある人材です」

藤原さんは30歳前後らしい。ロート製薬おそるべしだ。ロートの株、買おうかな・・・

以下記事の引用:

 採用と就活のマッチングプロセスにおいて、どこまで生成AIを活用するのがベストなのか。その解を探る取り組みの一つが、ロート製薬(大阪市)が昨年12月に打ち出した「エントリーシート廃止」と、それに伴う新しい採用制度の導入だ。

 同社は2027年4月入社の大学生・大学院生向け新卒採用で、エントリーシートによる書類選考を廃止し、人事担当者との15分間の対話を採用プロセスの第1ステップとする「Entry Meet(エントリーミート)採用」を導入する、と発表した。生成AIの普及でエントリーシートの記述内容の均質化が進み、従来の方法では一人ひとりの本質的な個性を十分に捉えきれない課題に直面したのが理由だという。

一緒に汗をかいて未来をつくる職場の仲間を見つける採用プロセスの中で、ひたすら『効率化』を追求することがベストな選択なのか、と疑問を感じたのが端緒です」

 こう補足するのは、同社人事総務部(採用担当)の藤原結衣さんだ。

 マイナビが26年卒業予定の全国の大学生、大学院生を対象に実施した昨年4月の調査によると、就職活動でAIの利用経験がある学生は66.6%。その利用方法で最も多かったのは「エントリーシートの推敲」(68.8%)、次いで「エントリーシートの作成」(40.8%)だった(複数回答)。生成AIの性能アップと普及のスピードを考慮すると、これらの比率はさらに高まっている可能性がある。

 ロート製薬でも昨年以降、新卒採用の現場で生成AIの影響が類推されるケースが目につくようになったという。「異変」を感知できたのは、同社がエントリーシートの項目に独自のアレンジを加えてきたからだ。

 出身大学や専攻分野を記入するプロフィル欄以外に、「共通の設問」を用意し、そのテーマに沿って回答してもらう論述欄(各500文字以内で3題)の設定だ。例えば、「あなたが社会の中で『違和感』のあることは何ですか? その理由や、ご自身がどう行動し解決していきたいかも含めて記入してください」という設問や、「答えのない問い・課題にぶつかった経験」を挙げ、そのときの葛藤や、どのように乗り越えたかを論述してもらう設問。あるいは、ロート製薬の説明会や座談会などを通して感じたこと、印象に残ったこと、それを通して考えた自身のキャリアビジョンや成し遂げたいことを記入してもらう――といった内容の設問だ。

「学業やアルバイト、サークル活動などガクチカ(学生時代に力を入れたこと)について答えてもらうのとは少し趣が異なる、就活生それぞれの個性や価値観がにじみ出るような論述を期待してテーマ設定をしてきました」(藤原さん)

 ちなみに、同社の入社3年後の新卒定着率は21年入社96%、22年入社93%と高水準を維持している。これを支える重要な要素の一つが「マッチング重視」の採用で、エントリーシートの論述欄はその特色を色濃く示すものだったようだ。

 藤原さんら書類選考に当たる採用担当の社員は、最大1500文字の文章を丹念に読み込むことで、プロフィル欄だけではくみとれない、就活生それぞれの個性や価値観の把握に努めてきた。書類選考の段階から学歴や資格の有無で一律に人材を絞り込むのは避けたい、との思いからだ。これは新卒採用の4~5割を占める研究職も例外ではない。

「研究職の社員も、マーケティングや営業など他部門の社員とコミュニケーションを取りながらチームで商品開発に当たります。このため専攻分野の知識にとどまらず、個性や人柄の把握がマッチングの重要な要素になります」(同)

 しかし生成AIの普及に伴い、「これは本当にその人の内面から出てきた言葉なのか。それとも生成AIが回答したことの丸写しなのか」が分からなくなるケースが増え、記述内容だけで就活生一人ひとりの可能性を正しく判断できているのか疑問を感じるようになったという。

「『ロート製薬に合わせたフレーズ』の文面が目立ち、論述欄にウェートをおく書類選考に限界を感じるようになりました」(同)

 典型的なのは、ロート製薬の理念・ビジョンや商品展開をなぞったうえで、それへの「共感」に内容が偏り、具体的にどんなことをやりたいのかが伝わりづらい記述だ。

 藤原さんは言う。

「私たちは『正解』や事業への過度な共感を求めているのではありません。限られた文字数の中で知りたいのはエントリーしてくださった『あなた自身のこと』であり、求めているのはこれまでの事業を土台にロート製薬にはまだ存在していない新しい事業や商品の作り手になっていただく可能性のある人材です」

 生成AIの活用の影響とみられるエントリーシートの均質化は「この1年間で顕著になった印象」だと藤原さんは明かす。とはいえ、藤原さんは生成AIの活用を否定しているわけではない。

「エントリーシートの記入に当たって、要約したり、読みやすい日本語に推敲したりするために生成AIを活用するのは全く問題ないと考えています。一方で生成AIの特徴は、ごく限られた情報を入力しただけでも、一見整った『それらしい回答』を容易に生成できる点にあります」(同)

 その影響は就活生と企業の双方に及ぶ。

 AI面接も含め、応募の手軽さが高まるほどエントリー数は増えるが、一方で企業は効率的な選考手法を追求することになる。学生も多くの企業に応募せざるを得ない状況になり、負担が増大するだけでなく、短期間で多数の選考に臨む構造上、十分な企業理解が難しくなる場合もある。結果として「入社後のミスマッチにつながり得る」と考えたロート製薬が出した答えが、「エントリーシート廃止」だったというわけだ。

 これに対し「エントリーミート」は、企業側からの一方向の評価に偏らず、直接対話し、価値観やビジョンを確かめ合うことが双方にとって有意義な場になる、と判断して導入した。採用の初期段階で書類やAI面接による選考が一般化するなか、就職活動が“合格するための対策”に偏り、志望校以外にも「とりあえず」願書を出す受験のようになっているのではないか、との危機感も背景にあったという。

「就職活動の目的は大学受験とは根本的に違います。将来にわたって自分の価値を発揮し続けられる場所を選ぶ就職活動は、本人の主体的な意思や納得感と、企業の文化や風土とのマッチングが不可欠です」(同)

就活生を「とりあえずエントリー」に駆り立てている要因は企業側にもある、と藤原さんは指摘する。

「就活生のエントリー数を増やし、そこから効率的に選考しようという流れは企業が生み出している面もあります。エントリーミートが就職活動のあり方を見直す一つのきっかけになればと思っています」

エントリーミートの募集は昨年12月15日に開始。事前にプロフィルなどを記入した書類を提出したうえで、面談枠を予約するシステムだ。面談枠が限られるうえ、いきなり対面となると応募のハードルも上がるはずだが、準備した面談枠は受付期間内にすべて埋まった。就活生の「本気度」は1月16日から始まったエントリーミートで実感したという。面談担当は藤原さんを含む30歳前後の採用担当社員が務めた。

「これまでの1500文字の文章を読むのと、15分間の対話をするのとでどれくらい学生の個性が見えやすくなるのか半信半疑の面もありましたが、実際に面談し、『なぜそう行動したのか』『なぜそう思ったのか』と深掘りの対話を重ねる中で、文章だけでは測ることのできない就活生の価値観や可能性が伝わってくるのを実感しました」(同)

 エントリーミートでは、オリジナルのプレゼン資料を用意して自己紹介するユニークな参加者や、「15分でも直接自分の言葉で話すことができたので、もし次のステップに進めなかったとしても納得感があります」と吐露する就活生もいたという。

 藤原さんは言う。

「対面の面談には、会ったときにお互いに感じ取れるものがあると思うんです。それはポジティブな面もあれば、ネガティブな面もあると思います。でも、それを感じるのは就活の中で早ければ早いほうがよいと思っています。エントリーミートはそういう機会になるのでは、と手応えを感じています」

 同社はエントリーミートの後、複数回の面接やグループワークを経て内定を出す。

 (AERA編集部・渡辺豪)

閑話休題:

20年前の採用のとき読んだエントリーシートに思い出がある。どこを読んでも書いた人の思想や哲学が書き表されていて一読、自分の頭で考えられたものだと直感した。「こいつは取らなきゃ」と思って採用した。入社後も期待通りに育ってくれた。他部署から欲しいと言われたが俺は断固出さなかった。「俺の見つけた宝物だ」みたいな感覚だった。その後、俺が退職してから他部署に異動した。彼はまだ辞めずに会社に残っているだろうか?今振り返ってみると、自分の頭で考えられた文章を読めるなんて、幸せな体験だった。

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