国家公務員の定数削減
2025年10月18付け文藝春秋電子版、編集部日記に
農水官僚から漂うあきらめムード…「コメ失政」取材で見えた日本の農政の「詰み」
僕は当初、農水省の劣化が問題点なのだろう、と、ぼんやり考えていました。 しかし、官僚、専門家、農家と取材を進めていくうち、その考えを多少、改めざるを得ませんでした。 もっと正直な気持ちを言うと、農水省に同情する気持ちも芽生えたのです。
なぜかというと、政府が経済政策を最重要視してきたことで、経済効率の悪い農業分野は二の次、三の次の産業として、人員も、予算も減らされ続けてきたからです。 農家と農地は減り続け、現状を維持することすらままならず、端的に言えば“オワコン”扱いで、農政のグランドデザインを描く余力すら奪われてきました。
たとえば農水省の統計職員は2004年時点から、8割以上も減っています。 これがコメの不作を察知できなかった一因です。 この数字を知った時は、目を疑いました。 しかし実は、農水省の元幹部によれば、統計職員だけでなく、農水省全体として、職員は減らされ続けているそうです。 彼は苦笑いを浮かべつつ、自虐的にこう話しました。
「要するに農水省には仕事がないでしょ、ってことです」
また、別の官僚に話を聞いた際には、「なんでまた、農政を記事にしようと思ったんですか?」と逆に問われました。
彼の一言は、我々に疑いの目を向けているのではなく、素朴に「どうして、こんな地味なテーマを取材しているのか」というニュアンスでした。
こちらは「コメ騒動で農政に注目が集まっているので……」と答えるのですが、注目もされず、人もカネも削られ続けた農水官僚たちは、軽視されることに慣れてしまっているのかもしれません。
現在は霞が関を離れて研究職に就いている元農水官僚が、こう語っていたのが心に残っています。
「(農水省は)もうほとんど、完全諦めモードだと思います。いくらジタバタしても、知恵を絞ってもどうしようもないから、結局、現状維持的になってくるわけですよね。
今年、課長になった僕の元同僚は、以前は積極的に『こんなことをやりたい』とか、色んなことを言っていたんですけど、最近は余計なことを言わない。 頑張る、みたいな話をしなくなりました」
農家に聞いても、明るい話はやはり出てきません。 もはや政治に期待する言葉はなく、高校生の息子がいる山崎久信さん(51・仮名)は、後を継がせますか、という質問に対して「絶対に継がせません」と、はっきり断言しました。
取材を通して、このような言葉を浴び続けた結果、奥野さんの冒頭の発言が出たわけです。 日本の農政が「詰んでいる」ということは、日本の食の未来も詰んでいるということです。 そして、この現状を作ったのは、国の舵取りをしてきた政府が農政を軽視していたからに外ならないのです。
ただ、奥野さんは将棋の話をしているのではない、というのを承知の上で言えば、現状は「詰んでいる」というよりも、次に正しい一手を指さなければ、自分の玉に詰みが生じる「詰めろ」がかかった状態になっている、という方がより正確のように思います。
つまり、劣勢ではあっても、正しい一手を指し続けることができれば、勝敗は決しません。 昭和の大名人、大山康晴が残した格言に、次のようなものがあります。
「助からないと思っても、助かっている」
他力本願のように聞こえますが、指し続ければ、何かが起こる。 もっと言えば、形勢がひっくり返ることだってある。 大事なのは、歯を食いしばって正着を指し続けることです。
国が農業を軽視し続けてきた長い歴史を踏まえれば、一発逆転など到底ありえないでしょう。 もちろん劣勢を招いた責任は、農水省自身にもあります。 物事はそう単純ではないのもわかっています。 それでも、農水省には、あきらめず地道に正着を指し続けて、決して自分たちから投了することだけはしないでほしい――。
農政を憂う、いち将棋ファンとして、今回の取材を通して、そんなことを思いました。
(編集部・寺島)
以下に内閣府が公表している国家公務員定数推移:
””売国奴”小泉純一郎内閣が閣議決定した平成17(2005年)年度削減目標。 言ってみれば、この、父親の公務員削減の結果、令和の米騒動が起き、息子が”尻拭い? ”で農水大臣をやらされる羽目に。 平成17年度以降令和7年までの推移も末尾に。
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