日韓基本条約

  ちくま新書 筒井清忠編「昭和史講義」(戦後篇 下)より 木村幹

日韓基本条約

韓国政府が日韓両政府の関係に持ち込んだ「特殊な主張」とは、大きく三つ存在した。第一は、これが、第二次世界大戦に勝利した「戦勝国」韓国と「敗戦国」日本の間での講和会議だ、という主張である。1948年に成立した大韓民国の初代大統領李承晩と彼の政権は、自らの国家すなわち大韓民国は、1919年に起こった三一運動を受けて上海に樹立された大韓民国臨時政府の法統を引き継ぐものだと位置づけていた。そして、この大韓民国臨時政府は日本による真珠湾攻撃の翌日、日本への宣戦を布告しており、故に韓国は連合国の一員であり、「戦勝国」である、としたのである。二つ目は「植民地支配違法論」である。朝鮮半島の民族運動勢力の間では、長らく日本による韓国併合は時の大韓帝国に対して軍事力を用いての脅迫をもって押し付けられたものであり、それゆえそこには大韓帝国側の有効な意志の表示はなく、国際法的に無効である、という主張が行われており、韓国政府もまた、今日までこの主張を継承することになっている。併合が違法である以上、日本による植民地支配そのもの違法であり、故にその支配下に行われたいかなる法的行為も違法かつ無効である、と主張する。だからこそ、韓国の政府や国民は、この日本政府の違法な支配により生じた損害や慰謝料を、日本側に請求する法的な権利がある、とした。

第三に、韓国併合が無効である以上、大韓帝国は国家として「法的には」消滅しておらず、その後も存在し続けた、とするものである。

韓国政府がこのような複雑な論理を以て臨んだ理由は大きく二つあった。一つは通常の脱植民地化の過程では、単にかつての植民地政府の資産が新たな独立国家にそのまま引き継がれるだけであり、そこに何らかの「賠償金」の請求権は発生しない。つまり、韓国政府はこの論理を持ち出すことで、植民地政府の継承により得られる範囲を超えて更なる追加的な資産を得ようとしたことになる。だからこそ、そのためには、韓国の立場は、インドやベトナムといった他の列強の植民地支配から独立した国々とは異なるものである必要があった。

第二の理由は、韓国が北朝鮮との体制間競争にさらされていたことである。韓国政府にとって、大韓帝国から大韓民国臨時政府へと引き継がれた「法統」の存在を主張することは、自らが北朝鮮に勝る正統性を有する重要な根拠の一つになっていた。(略)

講和会議参加をめぐる韓国の目論見は、イギリスがアメリカに対して「日本と戦争をしていなかった」ことを理由に韓国の参加を拒否することにより挫折する。当時のイギリスは、自らもまた新たに独立した旧植民地諸国との関係に苦慮しており、講和会議でもマラヤ、シンガポール、香港等への招へいを求めず、自らが代わってこれらの地域を代表することになっている。つまり、イギリスにとって韓国の参加は、これらの未だイギリスの植民地支配下にあった諸地域に独自な外交的権利を与えるきっかけとなるものであり、自らの「帝国」解体を促進しかねないものと映っていたのである。(略)

1961年6月、アメリカで誕生したケネディ政権が、日本において前年に首相就任した池田勇人をワシントンに迎え入れ、韓国との早期国交回復を呼びかけた。当時は韓国では前月の5月に朴正熙らによる軍事クーデターが行われた直後であり、新たに生まれた軍事政権はアメリカからの早期の承認を渇望していた。結果、11月には朴正熙自身が訪日を果たし、ここで「経済協力」方式での解決が決定される。つまり、韓国は自らが望んでいた不法な植民地支配への慰謝料や賠償金をその名目としては断念する代わりに、これに相当する一定の金額を日本から「経済協力」の名目で与えられる事で満足する、という方式で解決が図られることになった。こうして日本は、自らの植民地支配は合法である、とする主張を曲げずして、韓国に資金を渡すことが可能となり、他方、韓国側はこの金額を実質的な賠償であり慰謝料である、と見なして国内的に説明することになった。同じ金額を一方では「経済協力」のための資金と見なし、他方では「実質的な賠償金であり、慰謝料である」と見なすという二重解釈の許容は、条文自身の解釈にもむけられた。第二条に「1910年8月22日以前に大日本帝国と大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認される」という一文が置かれたが、両国はこれを日本側はこの条約が結ばれた1965年の時点で韓国併合をもたらした条約が無効となったことを両国が確認した、と解釈したのに対し、韓国側はこれらの条約はもともと、つまり締結された1905年や1910年といった時期にすでに無効だった・・・つまりその条約を根拠として行われた日本の支配は違法である・・・ことを両国が確認したものと、解釈することになったのである。

>>韓国は嫌だ。とりわけ文在寅はひどかった。中国・北朝鮮と仲良くし、嫌日嫌米だ。なぜあんなに日本を嫌うのか理解できなかったが、分かったような気がする。

①朝鮮は日本の植民地ではなかった、無理やり違法に植民地にされた、と言う屁理屈だ。

②朴正熙が受け取った金は単なる経済協力で日本は賠償も謝罪もしていない。

①はかなり弱い屁理屈だ。だって、20世紀初頭まではイギリスもアメリカも同様な植民地を持っており、日本はそれをマネしただけだから。

②は確かにそうかもしれない。カネの問題は朴正熙との間で片付いたとしても創氏改名など、日本軍・日本政府がご迷惑をおかけしたことは間違いなく、そのことについて謝罪が足りない。日本人は自国民に対しても創氏改名に相当するようなひどいことを強制した。つまり、朝鮮人を含む当時の日本国民の多くが被害者だ。日本人が国に賠償とか謝罪を未だに求めている例はあるのか?一緒に考えるべきか?




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