映画 ジャージー・ボーイズ

 クリントイーストウッドと高倉健の出る映画はなるべく見る。イーストウッドは長生きして監督もやってるが監督作品もなるべく見る。この二人は日本とアメリカの男のエッセンスを見せてくれる。ジェンダーなんて言われる前に沢山の映画に出た。

”ジャージー・ボーイズ”はイーストウッド監督作品で、ビートルズが世界中を席巻するる前にアメリカで人気のあった、ビーチボーイズと並び称されるフォー・シーズンズというロックグループ(演奏は日本のチェッカーズみたいな…って順番が逆だが)の結成から解散までの物語だ。

彼らをスターに押し上げたファルセットが印象的な”シェリー”というヒット曲があるが、その誕生秘話が描かれる。彼らのヒット曲以外にもオールディズが次から次へと出て来て思わず引き込まれる。"I can't give you anything but love"のロックバージョンも面白かった。一番うれしくまた面白かったのは今は亡き”タモリ倶楽部”の空耳アワーが始まる時に流れていた”ショート・ショーツ”という曲だ。この歌のシーンでショートパンツをはいた女の子のケツがアップになる。この歌の歌詞なんかまったく知らなかったが、歌の冒頭の歌詞はWho wears short shorts?というもので、女の子が履く短いパンツの事を歌った歌なんだ、と気づかされる。

ニュージャージーの田舎のイタリア系のチンピラがスターに成り上がるストーリーだが、当時のアメリカの芸能界はマフィアが仕切っていて、マフィアの親分が話の節々に登場する。言いたい放題言うだけで話をまとめようとしないアメリカ人にとってマフィアみたいな存在は必要なんだ、ということに気づかされた。アメリカ人は今でこそ弁護士を代理人にして話をまとめるなんて上品なことをするようになったが、当時(1960年代)はマフィアが揉め事の片を付けてくれた。非合法のマフィアの仕事が合法的な弁護士の手に移ったのだが、「言いたいの放題言いっ放し」というアメリカ人の「子供のような自由」が描かれる・・・This is American people。

そしてアメリカン・ハラスメント。グループだろうが、家族だろうが、「俺がボスだ」「黙って俺の言う事を聞け」という男が出て来る・・・フォー・シーズンズも長年親分面してきた男が他のメンバーに反発されてバラバラになる・・・日本人はあんなに「俺がボスだ」を主張しないから分からないが、確かにアメリカの「俺がボスだ」は強烈なハラスメントだ。逆に言うと、日本人のハラスメントなんて可愛いもので、害は小さいように思う。(むしろ「ハラスメントしちゃあいけない」という無用なプレッシャーによる先輩上司の指導の劣化の方が問題ではないか?)

この映画の公開が2014年。イーストウッド84歳。古き良きアメリカを回顧する。そしてどんどんダメになるアメリカをバカにし、嘆く。ポリティカルコレクトネスやらジェンダーなんて…大嫌い。かと思うと「トランプの言葉使いは下品だ」とも言っているようだ。

閑話休題:

フォー・シーズンズがバラバラになる原因の一つは長年親分面してきた男がこっそり作った膨大な借金が発覚したこと。リードボーカルであるフランキー・ヴァリは、この借金をメンバー4人で平等に返済すると宣言し、猛烈に仕事してとうとう返済し終わる。ところがフランキーは家庭を顧みることができずに娘が薬物のやり過ぎで死んでしまう。失意のフランキーは「君の瞳に恋してる」(Can't take my eyes off you) という曲を提供され、これが大ヒットとなる。面白いのは、この曲はフランキーのシングルレコードとして出されたのに、ヒット後、"The 4 Seasons Present Frankie Valli Solo"というフォー・シーズンズ名義のアルバムに収録されたことだ。フランキーのイタリア人気質というか、日本人にも似た(あるいは日本人より強烈な)「昔の仲間に対する恩とか縁」といったものを大事にする心情が出ている。

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