ブルーノ・ムナーリ「ナンセンスの機械」
この本は1942年にイタリアで発表された。ムッソリーニのファシスト党が支配下戦争中のイタリアで、どうしてこんなバカバカしい「非国民」的な本が出せたのか?
この本は、見開き左ページに機械の絵が描いてあり、右ページにはその動き、メカニズムが説明してある。以下に機械を紹介する。
一読して機械そのものも実にくだらないナンセンスなものだが、説明書きの、黄色でハイライトした部分は、そのナンセンスな機械の動き、メカニズムに全く関係も意味もない。
・目覚まし時計をおとなしくさせる機械
;君たちがジェノヴァで買って来た黒い滑車が糸を巻き付ける
・疲れた亀のためにトカゲを使ったモーター
;この歯車(イングラナッジョ)はこけもも(バッジョ)のチーズ(フォルマッジョ)製で、5月(マッジョ)2日に給仕(バッジョ)の決選投票(バッロッタッジョ)で選んだ…
・造花をにおわせる機械
;ふたの内側には18世紀の鏡がはってある。バレーゼの時計屋トーニ・トゥルソルディ氏が、その鏡をのぞくと、なんとまあ、熱々の野菜スープの中に、高価な時計がいくつも沈んでいるではないか。トゥルソルディ氏は腰を抜かして、空気室の上に倒れる…
・ゆで卵をつくる時の自動時間計測器
;シャム双生児ガメのアンネッタとルチアーナは、パンくずを固めて作った斜面を滑り落ち、千百三燭光の電球にぶつかって…
・留守中でも笛を鳴らすための機械
;ロープは切れて、炭火アイロンが落ちる。アイロンは、スミレの香水をふりかけ、セロファンで包んである
・シャンパンを瓶の下から取り出す装置
;パラグアイのウサギが驚いて、しっかり持っていた包を落としてしまう…チリ製のピストルの引き金を押して、発射させてしまう…この泡立ちぶどう酒の瓶は、まるで絵のようなヴェネズエラの帽子の上に立ててある…
・乾燥卵の自動ふりかけ機
;フィアンセの所に行く途中の雄クジャクの食道を蹴飛ばしてしまう
・雨を利用してシャックリを音楽的にする機械
;1892年の春の空気を吸って丸々とふくれた猫の皮の上に落ちて、ぎゅっとその皮を押して、尻尾の先にあいている穴から空気をシューと押し出す。ところが、このしっぽの先、レンズをみんなはずした天体望遠鏡につながっているのだ。望遠鏡の中には、レンズの代りに、洗ったり拭いたりできるようにベークライトで作った、2色の、吐いても吸っても鳴る往復二重笛が入れてあるのだ。さあ、よく見てみたまえ。その辺の店で買えば2万リラはするあれだ。でも、ここ、僕らの公共の広場では170リラで手に入る
・汽車が出る時にハンカチをふらせる機械
;樽の中には、ロンバルディアはスッザーラ出身のジェンナーロ・スコッチャララバ陸軍伍長の義理の兄弟がいて、各種主要新聞の夕刊に載っている天気予報を、気持ちよさそうに読んでいる
コメント
コメントを投稿