安倍晋三 歴史修正主義者?

安倍晋三さんは 

日本国憲法は占領軍が粗雑に作ったものを押し付けられた

東京裁判は戦勝国による敗戦国日本に対する断罪

慰安婦を強制連行した証拠はない

国のために殉じた人たちに対して国のリーダーが尊崇の念を表するのは当然だから靖国神社に参拝する

といった首相になる前からの発言から、「日本は侵略戦争はしていない、南京虐殺はなかった、慰安婦はなかった」ということを主張する歴史修正主義者だ、というレッテルを貼られた。また同盟国のアメリカがやられたらアメリカを攻撃した国を攻撃する、という集団的自衛権を認める(戦争法案と呼ばれた)法律を作ったところで「日本が戦争に巻き込まれる」と批判された。どうも、このあたりが、安倍晋三さんとその「戦後レジームからの脱却」が嫌われた経緯・理由らしい。

2014年12月に行われたカレル・ヴァン・ウォルフレンと白井聡の対談を本にした「偽りの戦後日本」(角川刊)という本を読んだ。白井さんのことは知らなかったが、ウォルフレンさんは「日本は占領されたままだ、目覚めて独立せよ」という考え、「自衛隊は違憲だから改憲して防衛専門の軍隊を持て」という意見の持ち主で「戦後レジームからの脱却」論者だと認識し、興味深くこの本を読むことにした。

同じ「戦後レジームからの脱却」論者でも、二人は徹底的に安倍晋三が嫌いで歴史修正主義だ、頭が悪い、何もわかっちゃいない、と非難する。これには大いに違和感がある。俺はアメリカと同盟関係にあるべきかどうか、を除いて安倍晋三さん(以下”安倍さん”)の言うことには概ね賛成だ。もっとも、安倍さんはアメリカとの同盟も日本が核兵器を含む独自の戦力を持ったら見直す(言い方を変えれば日米同盟を見直すためには日本は独自の戦力を持つ必要がある)と考えていた節はある。白井さんによれば、安倍さんの原発再稼働論は核兵器保有論だそうだが、将来的にアメリカとの同盟を解消する(そのために核兵器を含む独自戦力を持つ)ことを狙っていたなら俺は安倍さんに全面的に賛成。

二人がいい気になって安倍非難をし、「日本人は何もわかっちゃいない」と、日本を憂うのには大きな違和感を持ったが、それでも、この本で面白かったところがあった。以下抜粋:

①2014年3月17日に行われたクリミア議会によるウクライナからの独立、ロシア連邦への併合についての決定について

白井「日本の報道では、クリミアに軍事侵攻したロシアを批判する報道が目立ちます。しかし問題はそう単純ではない。(略)グルジアは黒海に面した軍事的な要衝ですが、アメリカはそこに対ロシアの前線基地を作ろうとしていた。それに対してロシアは断固たる態度を取り、アメリカの目論見は崩れました。にもかかわらず、アメリカは再度、ウクライナで同じことをやろうとしたわけです。(略)グルジアのときは北京オリンピックの時期を狙い、ウクライナのときはソチオリンピックの時期を狙った。実にそっくりなのです。」

ウォルフレン「アメリカが親ロシア政権を転覆させようとしたわけです。そのために数十億ドルもの金をつぎ込み、様々な宣伝工作をやっていた。そうした努力が実り、クーデターによって反ロシア的な政権が誕生する、そこで困ったのが、クリミアの人々です。(略)そこで住民投票を実施し、ロシアへと編入されることを選んだんです。するとウクライナ新政権との間で緊張が高まり。ロシアがクリミアに軍を送った、という流れですね。クリミアはロシア海軍にとっては非常に重要な場所です。プーチンの対応も当然だったと私は考えています。」

白井「その後、アメリカはロシアに経済制裁を加えるわけですね。」

ウォルフレン「はい、ロシアのクリミア侵攻に対する抗議と言う建前です。とても私には正当な理由とは思えない。しかし、経済制裁にはEUも加わりました。アメリカからの圧力を受けてのことです。」

白井「ウクライナの政変ではネオナチ*も動員されましたが、日本のメディアではそうした事情はほとんど報じられません。」

ウォルフレン「ロシアと隣接するウクライナがEUに加盟すれば、ロシアにとっては大きな脅威となる。NATO軍が国境まで迫ってくるからです。」

②お二人によると、日本を悪くしている元凶は官僚とメディアで、官僚もメディアの人も「優秀だけど『アメリカが占領時代とすっかり変わってしまって日本を愛していない』ことが分かっていないん」だそうだ。もう少し言えば、二人は小沢に率いられた民主党政権に期待していた。民主党政権誕生は朝日新聞以下のメディアの功績だった。それに官僚が抵抗し、メディアと一緒になって小沢のスキャンダルを仕掛け、最後には朝日新聞も裏切って民主党を政権の座から引きずり下ろした、それがとっても気に入らないらしい。俺は優秀な人は官僚になろうとしなくなっている、なぜならメディアが官僚を馬鹿にし非難するから、と思っているが、確かにメディアにも碌な人材が入っていないのかも。二人の指摘の通り、メディアは官僚を叩くフリをして実は官僚と癒着しているのかも。

③白井さんによればドイツは2回敗戦した。日本は1回しか負けてない。ヘーゲルは「重要なことは2度経験しないと本当には理解できない」と言った由。事実ドイツは1回の敗戦後、ナチを生み出した。原発ももう1回事故を起こさないとその危なさは本当に理解することができないのか???(白井さんは、自分は1回で原発の危険性は理解したと言いたいらしい)


*「論座」サイトに2022年3月23日に記載された清義明さんの記事の抜粋:

以下の記事で「なぜ、プーチンがウクライナをネオナチと呼ぶのか」を理解できる。ユダヤ人のゼレンスキーはネオナチと手を組んでいるってことだ。ロシアとの戦争では利害が一致していても将来戦争が終わったらどうするの?

アメリカの政治専門紙である「ザ・ヒル」は、2017年に、「ウクライナの極右の存在は決してクレムリンのプロパガンダではない」と題された記事で、「ネオナチ」とされるグループとして、「アゾフ大隊」(のちに「アゾフ連隊」)をあげ、これまでのその悪行を列挙する。アゾフ大隊は、2014年のウクライナの騒乱「ユーロマイダン」で頭角をあらわし、この流れで東部紛争で民兵となり、その武勇と悪名を同時に世界に発信した集団だ。そしてこのアゾフは現在、ウクライナ軍の中核的存在にまでなっていることも、よく知られていることである。ユダヤ系の人権団体サイモン・ヴィーゼルセンターの記事も紹介している。アメリカとカナダが、ウクライナの兵士を訓練しているが、それが明らかにネオナチだというレポート。そのウクライナ兵というのはアゾフのことだ。そのアゾフ兵は、白人至上主義者のタトゥーをいれ、エンブレムはナチスのトーテムコップ(髑髏マーク)があしらわれている。

 ウクライナの極右・ネオナチグループは、アゾフだけではない。「C14」というグループは、青年スポーツ省から資金供与されて「愛国教育プロジェクト」を主催しており、そのなかで子供たちの教育訓練キャンプを行っていた。アゾフとともに退役軍人省が主催する審議会のメンバーでもある。このC14は米国務省からテロ組織と指定されている極右組織である。彼らは警察と協力してキエフの自警組織もつくっている。なお、このグループの名称の「14」というのはネオナチや白人至上主義者の有名な暗語である。

 彼らはこれまで数々の治安犯罪を犯してきたが、それでも国や地方行政と癒着し、公然と活動してきた。極めつけだったのは、この団体をネオナチと呼んで批判したジャーナリストが訴えられ、それが有罪となったことである。ベリングキャットはこれについて「ウクライナの裁判所がネオナチをネオナチと呼ぶことを禁じた」と皮肉をこめて伝えている。この件では、司法とネオナチグループとの癒着が強く疑われている。

 このように議会や行政、さらには司法までも癒着し、東部紛争を通じて強い関係をもった極右グループ、その多くは極右・ネオナチと称されている集団は、C14やアゾフに限らない。「右派セクター」「エイダーバタリオン」等々。東部紛争で民兵化したグループだけでもおおよそ40ぐらいとも言われている。

 このように、ウクライナのネオナチの存在は、別にロシアだけがとりあげて警告してきたことではないのだ。むしろ西側のメディアもずっと取り上げ続けてきた。

 ロイターの2018年の記事では「ウクライナのネオナチ問題」という記事のなかで、ウクライナのネオナチについてウクライナ人がとがめるどころか称賛しており、このため「長期的にウクライナを危険にさらす」とも指摘し、さらに一般人の志願者を軍事訓練するなどして勢力を拡大していることを報じている。

閑話休題:

憲法9条に象徴される戦後レジームからの脱却って難しいね。人類の歴史を振り返ると上述のロシアによるウクライナ侵攻のような、自衛のために他国を攻撃するってことが繰り返され、いくら憲法で縛ってもこれはやめることはできないようだ。つまり改憲して軍隊を持ったら日本も防衛を名目に他国を攻めることを想定せざるを得ないだろう。軍隊ってそういう自己増殖というか制御のしにくさが宿命。今の日本は、アメリカとの同盟を維持強化して国防すべきか、それとも、アメリカの属国をやめて(同盟も白紙にして)独自の国防を考えるのか?どちらがいいのか?難しい。俺はどちらでもよい。無責任と言われれば無責任だ。そんなことより、お二人の言を借りれば、「官僚とメディアが目覚めて」日本国民にそのどちらか、または他の道を選択すべきか、について議論するテーブルにつかせるようにしむけることが重要だ。

安倍さんの「戦争法案」は戦後レジームからの脱却とは明らかに矛盾する。しかし今、同盟しないで一国単独でできる国防は北朝鮮方式しか実例がない。それはできない、と考えればとりあえず、中露ではなくアメリカと組もうじゃないか、という選択は許容範囲内だ。一方で日本国民が議論した結果、非武装中立を選ぶなり、中露その他アメリカ以外の国を選んで同盟するという結論に達しても俺は戸惑いよりうれしさの方が上まわる。

「戦争に巻き込まれる」と言い張る人は①「国防は重要だと思うが俺は巻き込まれたくない」というのか?②「日本は憲法9条を守って、やられてもいいから非武装中立すべき」というのか?俺は②なら許す。①なら利己主義、公共心ゼロ、と非難する。あるいは「誰も巻き込まれない国防ってどうしたら可能なの?」と聞く。「戦争に巻き込まれたくない」は「絶対安全な原発」と同じ。国防でもエネルギーでもセキュリティのためには人が死んだり事故が起きるのは当然。原発でない発電所だって事故で人は死ぬ。

第2次世界大戦では米英はスターリンの共産主義とヒトラー率いるナチを比べてスターリン・ソ連を取った。ウクライナ・ロシア問題では、プーチン率いるロシアとナチと仲の良いウクライナを比べてナチ・ウクライナを取った。ロシア革命以降、ヨーロッパってナチとロシアによる狂言回しでグルグル回っている。

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